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絆創膏と湿布、受けとってくれたやろか、と気になって次の日小屋に行くと、扉の前には、俺が置いたままの状態で絆創膏と湿布が置いてあった。
使ってくれなかったみたいやな。いや、もしかしたら使うほどの怪我してへんかったってことかもしらんし。
ノックをしてみても、昨日のような反応はなく、ただただ沈黙だった。
うーん、おらんのかな?それとも、俺、なんや嫌われとるんやろか?
考えてもわからないから、一先ず校舎に戻ることにした。
放課後、部活終わった後にでも、また来てみよかな。
放課後、他のみんなには先に帰ってもらって、一人でまた校舎裏の小屋に向かった。
今度こそ、小屋の住人に会えるやろか、と思いながら歩いていると、小屋の近くで木から果物をもいでいる女の子を見つけた。この子やろか?
「なあ、」
「、っ!」
近づいて声をかけると、女の子は声もあげられずに驚いた様子で、目を見開いて俺を見た。そして、驚いた拍子に落とした果物をそのままにして、小屋へ走ろうとした。
が、足元の果物に足を取られて、転んびそうになってしまった。
女の子が怪我をしないように、とっさに腕をとると、女の子は捕まれた腕を見て、ただただ声もあげずに泣くばかりだった。
「えっと、とりあえず落ち着き。怪我してまうから、ここでそんな急いで動いたらアカンよ。ほら、足元果物ゴロゴロしとるから。」
落ち着かせるように笑顔でそう言うと、女の子は泣きながら足元の果物を見て、コクコクと頷いた。
あ、ちゃんと言葉通じるんや、なんて当たり前なことに、少し驚いた。
やって、幻の小屋の住人やし、もしかしたら妖精なんちゃうか、とか、ちょっとだけ思ってんもん。
腕離したら、多分一目散に小屋に逃げ込むんやろな、と思いながら、腕を離すか離さないか悩んでいると、女の子は酷く怯えた様子で恐る恐る口を開いた。
「あなた、が、連れて来たの?」
場違いに、ああ、綺麗な声やな、なんて思った。
せやけど、連れて来たって、どういう意味や。
「俺は昨日初めてこの小屋見つけてんけど、自分はずっと住んでるわけやないん?誰かに連れて来られたん?」
不思議に思って聞くと、女の子の目から流れ出てくる涙の粒がさらに大きくなった。なんかアカンこと言ってもーたんやろか、と焦っていると女の子は、わからない、と呟いた。
「なにも、わからない。ここがどこか、なんで、私ここにいるのか、どうやって帰れば、いいのか、なんにも、」
まさか、誘拐?
「とりあえず、森から出ようや。」
女の子は泣きながらじっと俺を見てから、小さくコクンとうなづいた。
ここにいるよりは、俺といたほうがよさそうって、思ってくれたみたいや。
すぐに出られるはずやのに、歩いても歩いても、森から出られなく、気づいたら、また小屋に戻って来ていた。
歩き疲れた様子の女の子を見て、これ以上やみくもに歩かすんは酷やなと思った。
「ちょっと帰り道探してくるから、ここで待っててや。」
小屋の前に座りこんで、コク、と頷く女の子を置いて森を歩くと、森の出口はすぐに見つかった。こんな単純な道、どうして迷ったんやろか。
せやけど、小屋に戻って女の子と一緒に歩き出すと、また道がわからなくなって、小屋に戻ってしまった。
女の子が木の根とかに足をとられて転ばへんやろかと気にしすぎて、道に迷うんやと思った俺は、また女の子を小屋の前に待たせて一人で出口に向かった。
出口はすぐに見つかった。
「…やっぱり、めっちゃ単純な道やんな。」
出口付近の木に、持ってた予備の包帯を結びつけて、女の子のもとに戻った。これなら目ぇつむっとっても大丈夫やわ。
「待たせてごめんな。森の出口に包帯結んで来たから、もう大丈夫やで。」
女の子は、コク、とうなづいて小屋の扉の前から立ち上がった。
さっき果物もいどったし、お腹すいてんのかもな。はよ外出したろ。
せやけど、それは叶わなかった。
「…出口や、ない?」
出口に結んだ包帯は、出口でもなんでもない木に結びつけられていた。
なんでや。俺は確かに出口の木に結んだのに。いや、それもやけど、一人で歩いていた時は、迷うはずのないくらい単純な道やったのに、なんでこの子と一緒やったら出られへんねん。
…もしかして、なんらかの力で、この女の子だけ、この森に閉じ込められとる?
包帯から手を離し、先に進むと、また小屋に戻っていた。
「ちょっと、小屋で話しよか。」
できるだけ穏やかに笑ってそう言うと、女の子は小さく頷いた。たくさん歩いたし、歩き疲れて座って休みたかったのかもしれない。
一先ず、小屋で休んでから、この森のこと、話して聞かせよう。
幻の小屋のことを。
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