long | ナノ


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ここに来てすぐ、誰も来ないまま朝を迎えた後、どうやらここには誰も来る気配がないと思った私は、縮こまっていたベッドから抜け出して、部屋の中の様子を少し観察してみた。

広くはないけど、狭すぎはしない、普通の部屋。

さっきまで私が縮こまっていたベッドが一つと、小さめの食器箪笥とクローゼット、窓際の小さなテーブルと椅子。あと、蓋付きの木箱…、チェストっていうのかな。中を見たけど、ごちゃごちゃしていて何があるのかよくわからなかった。

水道の蛇口を捻ると、驚いたことに水が出た。水、通ってるんだ。最近まで人がいたんだろうか。

でもよかった、これで飲み水は大丈夫そう。

外はどうなってるのかな、とドアに近づこうとした時、ドアノブがガチャガチャと音をたてた。誰か、来た!

思わず驚いて、足をベッドの足にぶつけてしまった。痛い。

扉の外の人は、しばらくいろいろと言っていたけど、絆創膏と湿布をよかったら使って、と言ってから去っていく気配がした。あの人が、私をここへ連れて来た人なんだろうか。

あの人がまた帰ってくるかもしれないからしばらくは恐ろしくてベッドのそばから動けなかったけど、いつまでたっても沈黙は動かなかったから、私は恐る恐る扉を開けてみた。誰も近くにいないことに安心して辺りを見回してみた。右を向いても左を向いても、木、木、木。森、なんだろうか、ここは。

でも、果物がなる木がたくさんあるのは幸いだった。これで一応は飢えたりはしないだろう。よく果物ダイエットとか言ってお弁当箱に果物だけをつめてた友達がいたっけ。いっつも2日くらいしかもたないから、三日坊主にすらなってないねって笑ってたな、なんて思い出して、泣きそうになってしまった。その気持ちを振り払うように頭を2、3回振って、近くの木になっていた果物を何個かもいで、部屋に戻った。


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