5:気持ちを伝えたい
小春ちゃんに軽くあしらわれるのは、私の気持ちがちゃんと伝わってないからなんじゃないかと思って、今日はっきりと気持ちを伝えることにした。
ただ単に、小春ちゃんに大好きって言いたいだけっていうのもあるけどね。
「小春ちゃん!」
「ん?」
「あのねっ!」
「なに?」
「話があるの!」
私が真剣な顔で、気合いを入れて大きな声でそう言うと、小春ちゃんは、何をそんな改まって、と笑った。
「小春ちゃんのことが、大好き!」
よし、言えた!
かまなかったし、はっきりと言えた。
小春ちゃん、私と一緒にいるときもよく笑ってくれてるし、嫌われてはないと思うんだけど、なんていわれるかドキドキする。
友達にしか見られへんなんて言われたらどうしよう、いや、だめだめ、弱気にならない!
好きって言ったんだから、ちゃんと腹をくくって、小春ちゃんの返事を待とう。
「ふふ、照れるわー。アタシも伊織ちゃん好きやで。」
「ほんと!」
じゃあこれからは、二人でデートしたりしようね!と喜んで続けようとした私は、小春ちゃんが発した次の言葉に固まってしまった。
「ほんまやで。伊織ちゃんは大好きな友達やからね。」
「…。」
とも、だち。
ああ、そっか、好きってそっちの意味か、とうなだれる私を見て、小春ちゃんは心配そうな顔をした。
「どないしたん、伊織ちゃん。どっか痛いん?」
胸が痛いです、なんてばかなことを考えながら、首を横に振った。
「ううん、大丈夫。」
落ち込むことはないよ。友達としてだけど、小春ちゃんに大好きって言ってもらえたんだから。
「小春ちゃん、大好き。」
「ふふ、おおきに。アタシも好きやで。」
嬉しそうに笑いながらそう言った小春ちゃんを見て、これはこれで幸せだな、なんて思った。
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