日曜日:終わり
昨日家に帰ってからずっと、謙也君がオススメしてくれたCDを聴いている。
昨日は本当、すっごく楽しかったな、なんて思って一人でちょっとにやけてると、携帯が着信を告げた。
「ん?メガネ屋さんだ。…はい、もしもし。」
電話に出ると、いつものメガネ屋さんのお兄さんだった。
まだメガネ届くまで3、4日くらいかかるだろうに何だろう。
「あ、予定より早くメガネ届いたよ。よかったね、不便だったでしょう?時間がある時に取りに来てね。」
「えっ、まだ3、4日くらいかかる予定じゃ…?」
「うん、そうだったんだけどね、予定より早くなったんだ。」
私の反応に驚いたらしく、もしかしてメガネ届くのイヤだった?と不思議そうに聞いてきたお兄さんに、慌てて、いえっ、そんなことないですよ!今日取りに行きますね、と言ってから携帯を切った。
まだ届かないと思ってたんだけどな。
メガネないと不便だし、お気に入りのフレームだったし、待ち望んでたはずなのに、なんだか気持がすっきりとしない。
携帯がまた鳴り、次はなんだろうと開くと、謙也君からの、今日どっか行かへん、というメールだった。
そのメールを見て、なんだかすっきりしない気持ちの理由がわかった。
そっか、メガネが戻ったら、もう謙也君がこうしてメールくれたり、登下校とかを一緒にしてくれることもないんだ。
それが、きっと、すごくさみしかったんだ。
最後にわがまま言っちゃお、と思って、メガネのフレーム届いたから、一緒に行ってもらってもいい?と返信した。
謙也君のメールはいつもびっくりするくらい速いのに、今回だけちょっと遅かったから、わがまますぎたかな、とちょっと不安になったけど、いつも通りの、おん、一緒行こうや!家で待っててやー、という明るい文面が届いたから安心した。
家まで迎えに来てくれた謙也君に手を引かれてメガネ屋さんに辿りついて、あっけないくらいあっさりと、メガネは私の手に渡った。
メガネをかけてメガネ屋さんを出るころには、どちらからともなく、手は離れていた。
もう、手を引かれなくても、前見えるもんね。
なんだか、やっぱり、さみしいや。
もう大丈夫なのに、謙也君は家まで送ってくれた。
途中までで大丈夫だよって言おうかとも思ったけど、今日で最後だから、甘えることにした。
「送ってくれてありがとう。明日から、もう大丈夫だね。一週間弱だったけど、楽しかったな。ありがとうね。」
「おん、俺もめっちゃ楽しかった。」
あーあ、せっかく謙也君の顔の表情もはっきり見られるようになったっていうのに、なんだか気恥ずかしくて、謙也君の顔がうまく見られないや。
「ほなな。」
「うん、気をつけて帰ってね。」
「おん、おおきに。」
私は、謙也君が見えなくなるまで見送った。
もう今日で最後か。さみしいな。
でもやっぱり、謙也君のおかげで、すっごく楽しかった。
今はちょっとさみしいけど、こんなに楽しい思い出が出来たんだから、謙也君と会えて、本当によかった。
キラキラと太陽に反射するかのように光る金髪は、曲がり角を曲がったせいで、もう見えなくなっていた。
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