園芸委員と約束
「すまんなあ、神崎はん。また遅くなってしもうて。」
「ううん、気にしないでいいよ。」
最近、石田君はちょっと遅れてくる。
といっても、急いでお弁当を食べたらちゃんと時間内に委員会の用事が終わるくらいだから、別に遅刻ってほどではないのだけど。
それよりも気になるのは、石田君にかすかにまとわりついている匂い。
甘ったるい香水の匂い。
女の子と会ってるのかな?
彼女、できたのかな?
石田君優しいもんね。
今までいなかったことが不思議なくらいかも。
「どないしたんや、うかない顔して。」
「どうもしてないよ。大丈夫。」
石田君はまだ心配そうな顔をしていたけど、私が笑って、本当になんでもないって、と言うとしぶしぶ納得してくれたみたいだった。
「もうすぐ咲きそうやなあ。」
「え?」
「神崎はんの好きな、あの花。咲いたら一緒に見ようなって言ったやないか。忘れとったんか?」
「わ、忘れてないよ!楽しみにしてるもん。」
石田君、覚えててくれたんだ。
私の好きな花、一緒に見ようって言ってくれたこと。
なんか、すごく嬉しい。
たたそれだけのことなのに、さっきまでのもやもやしたものが晴れていった気がした。
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