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1:初対面やんな


ユウジのクラスの奴が付き合いはじめたらしい。一目惚れやったんやって、よかったな、と言うユウジは、別にどうでもよさそうだった。

たぶん小春以外の恋愛話は興味ないんやろうな、とちょっと笑ってしまった。

「一目惚れかぁ、俺はちょっといややな。」

「ん、なんで?惚れてくれてんねやから、好意もろとけばええやん。」

ま、俺は小春からやったら好意も悪意もすべて受け入れるけどな、と続けたユウジを軽く流して笑った。

「んー、せやな。でも中身知って好きになってほしいやん。」

ほー、顔のいいやつは言うことちゃうな、と言ってニヤッと笑うユウジに、ちゃかすなや、と言って頭を軽くはたくと、近くを歩いていた一人の女子がくるっと振り返った。

「一目惚れでも好意は好意ですよ。受け取る受け取らないはもちろん個人の自由ですけど、一目惚れだからといって中身を知らないだろうと好意をはねのけるだなんて、ずいぶん厳しいんですね。」

「へ?」

え、なんやろう、この子。初対面やんな。なんか気に障ること言うてもたんやろか。

「まあ、こんな初対面の私がいきなり何を言ってるんだという感じでしょうが、モテるならモテるなりに、みんな俺を好きになってありがとー!でも俺は俺のものだからごめんね!くらい豪快に返してみたらどうですか。では。」

その子は言うだけ言うと俺の返事を待たず、颯爽と去って行った。

「珍しいな、神崎、あんなつっかかるようなことあんませぇへんねんけど。」

「え、ユウジ知り合いなん?」

「クラス一緒やねん。俺の小春をとろうとするからライバルや。」

「へぇ、そうなんか。」

普段あんまりつっかかったりするような子やないってことは、やっぱ俺がなんか気に障ること言ってもたんやろか。

まあ、とりあえずユウジの教室まで着いてってみよ。


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