long | ナノ


園芸委員とお弁当交換



今日のお弁当は、委員会の日だからいつもより大きめ。

石田君覚えてるかな、とベンチに座りながら手元のお弁当を見ていると、石田君がやってきた。

「神崎はん、約束通り弁当作ってきたで。」

「私も石田君に作ってきたよ。はい、どうぞ。」

「おおきに。」

「いただきます。」

「いただきます。」

石田君の口にあったかな?大丈夫かな?とちょっと不安になって石田君のほうをちらっと見ると、同じような表情の石田君と目があって、お互い小さく笑った。

「あ、この卵焼き美味しい。」

「神崎はんのきんぴらもうまいで。」

石田君のお弁当は、程よく薄味で、きっと丁寧に作ってくれたんだろうな、と思った。

「石田君料理得意なんだ。将来素敵な旦那さんになるね。」

「、ごふっ!」

「石田君!?大丈夫?何か喉につまった?お茶、お茶、はい。」

むせて顔を赤くした石田君に、私が焦ってお茶を差し出すと、石田君はそれを飲んでからおおきに、と言った。

「料理はな、実はあんまり得意やないんや。せやから、今朝は料理本と格闘しながら作ったんや。」

「そうなんだ。それでもこんなに作れるなんて凄いよ。」

石田君は少し照れたように笑った。

「神崎はんも、・・・。」

「ん?」

「神崎はんの料理もめっちゃうまいから、きっとええ奥さんになるやろうな。」

「っ!」

口にものを入れてなくてよかった。

もし入れてたらむせてしまうところだった。

「あ、ありがとう。」

照れて小さな声でお礼を言うと、石田君も照れたように、おおと返してくれた。

その後はなんだか二人とも照れてしまって、お弁当を食べ終わるまで会話はほとんどなかった。

それでも、その沈黙は痛くなくて、石田君の隣はあったかくて心地よかった。


prev next

[ top ]