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園芸委員と好きな花



石田君の隣でお弁当を開くと、石田君がじっと見てきた。

「神崎はんのお弁当はいつも美味しそうやなあ。」

「ほんと?ありがとう。よかったら何か食べる?」

今日の力作は卵焼きだよー、とすすめると石田君はちょっと遠慮しつつも食べてくれた。

「ほんまにうまいで、この卵焼き。力作ってことは神崎はんが作ったんか?」

「うん、お弁当は自分で作ってるんだ。」

やっぱり人に美味しいって言われると嬉しいな。

「神崎はんは凄いなあ。わしも今度自分で作ってみようかな。」

「本当?私、石田君の作ったお弁当食べてみたいな。今度作ってきたら、よかったら私のと交換しない?」

私がそう言うと、石田君は嬉しいような困ったような複雑な顔をした。

「神崎はんのお弁当は食べたいんやけど、わしのお弁当は多分あんまりうまないで?」

石田君、料理苦手なのかな?

料理苦手なのに自分でお弁当を作ろうとするだなんて、なんて偉いんだ、石田君。

「味はそんなに気にしないよ。石田君が作ったものが食べたいんだけど、だめかな。」

石田は頭を抱えて俯いてしまった。

どうしよう、困らせちゃったかも。

「ご、ごめんね、無理しなくていいからね。」

「・・・作ってくる。」

「え?」

何か言ったみたいだけど、頭抱えたままだからよく聞こえないよ、と思っていたら、石田君が顔をあげてこっちを見た。

「次の委員会の仕事ある日に、わしも弁当作ってくるから、神崎はんのお弁当、わしにくれるか?」

「え、いいの?」

私が石田君の作ったお弁当食べたいとか我が儘言ったから、無理させちゃったかも、と眉を下げると、石田君は優しく微笑んだ。

「わしは、神崎はんが作ったお弁当を食べたいんやけど、あかんかな?」

「っ、わかった!頑張って美味しいの作るね。」

なんだか石田君の笑顔が優しくて、見てるのが恥ずかしくなった私はベンチを立ち上がってそそくさと花壇に向かった。

「まだまだ蕾硬いね。」

「この花が神崎はんが好きな花なんか?」

「そうだよ。咲くのが楽しみ。でもここの花壇人があまり来ないから、あんまり見てくれる人いないんだ。」

「ほな、今年はこの花が咲くの一緒に見ような。」

「うん、一緒に見ようね。楽しみだな。」

石田君と一緒に見られると思うと、なんだか花が咲くのがいつもよりももっと楽しみに思えた。


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