long | ナノ


視界に入れて


最近気づいたんやけど、神崎はまったく俺を見てへん。

たまに目が合うこともあるけど、俺の視線に気づいて振り向くか、謙也を見とってたまたま近くにおった俺を見るかのどっちかや。

は、なんやねん、それ。

めっちゃ俺に興味ないっちゅーことやないか。

いや、神崎、俺が話しかけると、いつもなんや怯えとるみたいやから、興味ないよりさらに悪いかもしらん。もしかして、嫌われ…、いやいや、ないない。

やって、俺んこと嫌いやないって本人言うてたしな、うん言うてた言うてた。

あ、神崎教室に入ってきた。珍しく、俺より遅いな、なんて思っとったら謙也が神崎に手を振った。

「おーい、神崎!」

「おはよう、謙也君!…、と白石君。」

なんやねん、その、わ、白石君もいたんやっていう反応。

俺の席やねんからいて当たり前やろ。

「おはよう、神崎。なんて顔してんねん。朝から人の顔見てする顔とちゃうわな。」

俺が苛立ちを隠しもしない笑顔で聞くと、神崎はさらに顔をひきつらせた。

「き、気のせいじゃないかな。もとから、」

「ああ、せやな。顔がおかしいんはもとからやな。」

神崎は、ひどい!とショックをうけた顔をしたけど、最初にもとからやって言うたん神崎やからな。

「ははっ、神崎顔おもしろいことなっとるでー。」

「謙也君までひどい!」

「ええやん、おもろいんかわいくて!」

「謙也君!エンジェル!」

イラっ。

いつも白石君ひどい、って言って謙也になぐさめられるんが定番化しとるやん。せやから、謙也君ひどい!って言うたから俺に泣きつくかな、とかちょっと思っとったんに、なんやねん、それ。いやまあ、もともとの原因は俺やけど、それでもなんや腹立つ。

せっかく謙也から離れて俺に泣きついてきたら、まあかわいそうやし、優しくしたってもええかな、って思っとったんに。ああ、優しいな、俺。

というか、神崎、俺んこと嫌いやないって言ったん嘘なんやないか?

ああ、なんや腹立ってきた。

「なあ、神崎。」

「なに?」

「昼休み、二人で飯食べようや。」

なんや、いつの間にかそんな仲よォなっとったんやな、と笑う謙也をよそに、神崎は顔を蒼白にした。

ほんま、失礼なやつや。


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