ファーストコンタクト
このクラスになってから初めての席替えで窓際の1番後ろの席になった。こないだまでは1番前の教卓前やったから大進歩や。
隣は誰やろ、と隣の空席を見ていると、よォ見覚えのある子がやってきた。
たまにテニスコートに謙也見に来とる神崎や。
仲ええから付き合ォとるんかと思って謙也に聞いたら、ただの友達やって言われた。
「あ、白石君。隣なんだね、よろしく。」
「ああ、よろしゅうな。」
そう言えば神崎と話すん初めてかもしらん。
せっかく隣の席になったんやし、仲よォなれるかな、と思っとると、俺の斜め前、つまり神崎の前の席に謙也が来た。
「あ、謙也君!前の席なんだ!また席近いね、嬉しい!」
「ほんまやな、神崎!よろしゅうな!」
うん!と頷く神崎は、さっき俺に見せとった笑顔とは比べもんにならんくらいええ笑顔やった。
なんやねん、それ。
「あ、神崎髪はねてんで。」
「え、どこどこ?朝ちょっと寝坊しちゃったんだよね。恥ずかしいな。」
「そのくし貸し。といたるわ。」
「ありがとう、謙也君。」
なんやろ、なんか今イラっとした。
てかなんで謙也ナチュラルに神崎の髪触ってんねん。神崎もなんで嫌がらへんねん。
くしから髪がサラサラとすり抜けて、なんや綺麗やった。
「髪、」
髪俺も触りたい、とか口走りそうにになって、慌てて口をつぐむと、神崎と謙也がこっちを向いた。
「なんか言ったか、白石。」
「髪、ボサボサやな、神崎。」
あれ、なんや思わず口が動いてしもた。
「え、えっと、そんなボサボサかな?」
「白石何言うてんねん。大丈夫やで、神崎。ちょっとはねてるだけやから、かわええ、かわええ。」
「ありがとう、謙也君。」
「はねてんのがかわええとか趣味悪いな、謙也。」
アカン、ボサボサなんて思てへんって謝ろうと思っとったんに、神崎が謙也に笑いかけるから、ついまたこんなこと言うてもた。
てか、謙也、かわええってなんやねん。お前ヘタレやなかったんか、口説いとんのか。
「し、白石君って、遠くで見てるのと、なんか印象違う、ね。」
はは、と神崎はひきつった笑みを浮かべながら言った。
「遠くで見とったん?」
なんでかちょっと機嫌がよくなるのを感じながらそう聞くと、うん、と頷かれた。
「だって白石君、よく謙也君と一緒にいるから。」
ほお、へえ。
謙也見とったらたまたま俺も目に入っとったってだけか、アホらし。
さっきまでよくなりかけた機嫌がまた悪なって、やっぱりなんか神崎腹立つわ、と思った。
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