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園芸委員とお弁当


お昼休み、私は花壇の前のベンチで一人でお弁当を食べていた。

いつもは友達と教室か学食だけど、委員会の仕事がある曜日は別。

今日は新しい苗を植える日だからやること沢山あるし、早く食べ終わっちゃおう。

「神崎はん、もう来てたんか。早いなあ。」

私がちょうど最後の一口を食べ終わったところで、石田君がやってきた。

「うん。でも石田君こそご飯食べてから来たのにこんなに早いなんてすごいね。」

もっとゆっくり食べてきてもよかったんだよ、と笑うと石田君は、神崎はんが教室におらんかったから少しあわてて来たんや、と言った。

あわてる石田君、ちょっと見てみたかったかも。

「じゃあ今日はこの苗を植えよう。はい、軍手とスコップ。」

「おおきに。」

石田君と小さなスコップはミスマッチでなんだか可愛かった。

「神崎はんは委員会の日はいつもここで弁当食べとるんか?」

「うん、そうだよ。そのほうが早く仕事にとりかかれるし、花を見ながらお弁当食べると美味しいし。まあ、まだ植える前だから、何も咲いてないんだけどね。」

そう言うと、石田君は何か考えているような顔をしてから口を開いた。

「ほな、その・・・、次からわしもここで食べてええか?」

「え、いや、私は好きで早く来たいだけだから、石田君は早く来なくてもいいんだよ?」

「わしも、好きで早く来たいだけやから。ええか?」

そう言われたら、断る理由はない。

「それなら、いいよ。実はちょっと、一人で食べるのは少し寂しかったから、石田君が来てくれたら嬉しいな。」

友達はみんな、風でお弁当に砂が入るって言って、一緒に外で食べてくれないんだ。

砂なんてそんなに入らないのにな。

「お、おう、ほな始めようか。」

そう言いながら少し急いで苗のところに向かう石田君の頬は少し赤かった。

あんなになるほど急いで来てくれたなんて、石田君はいい人だな、本当に。


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