大好き5個
「一氏先輩ーっ!」
家庭科の調理実習が終わって、自分のクラスへ戻る途中、一氏先輩を発見した。
なんてベストタイミング!
「おう、神崎。」
振り返て軽く手をあげた一氏先輩はやっぱりかっこよかった。
「一氏先輩!さっきの調理実習で作ったんです!よかったら食べてもらえませんか?」
一氏先輩に渡すために、ちゃんとラッピングした包みを一氏先輩に差し出すと、一氏先輩は少し驚きながらも受けとってくれた。
「あ?俺がもろてええんか?」
「はい!一氏先輩が大好きなので、一氏先輩に食べてもらいたいんです。」
「さよか〜、おおきに。」
「ちょ、ちょっと待たんかいユウジ!」
一氏先輩に受けとってもらえて幸せだ〜、と喜んでいると、一氏先輩の隣にいた人が驚いたような焦ったような声をだした。
「なんや謙也、お前も欲しかったんか。」
「あ、そうだったんですか。ラップで包んだだけのものでもよろしければ、どうぞ。」
「え、あ、どうも。」
けんや、と呼ばれた先輩はとりあえず受け取ってくれた。
なんや、俺のとえらい違いやな、と小さく笑う一氏先輩に、そりゃあ、大好きな一氏先輩には可愛くラッピングしたものをあげたいじゃないですか、と言うと、はー、そんなもんなんか、と一応納得された。
「って、なんでやねん!ユウジ何告白軽く流してんねん!自分も何さらっと告白してんねん!ついノリで俺もカップケーキもらってしもたけど、そんな場合ちゃうやろ!」
告白を軽く流されるのはいつものことですし、カップケーキを一氏先輩に受け取ってもらえたので私は嬉しいです、と言うとけんや先輩は自分の頭をがしがしとかいてうなだれた。
「健気や!なんて健気なんや!」
別に普通ですよね、と一氏先輩の顔を見ると、ひどく驚いた顔をした一氏先輩と目があった。
「一氏先輩?」
「お前、あれ、告白やったんか。」
「え、はい。そうですよ。」
何をいまさら、と思いながら答えると、一氏先輩は驚いたような顔をした。
「一氏先輩。私、一氏先輩のことが、大好きです。」
今なら伝わるんじゃないか、そう思って一氏先輩の目を見ながら告げると、一氏先輩はさらに目を見開いた。
「小春先輩のことが大好きなことは知ってます。でも、もしよかったら、私とも仲良くして下さい!」
私が笑いながら言うと、一氏先輩は、少しとまどいながら、お、おう、と言ってくれた。
初めて、私の「大好き」が一氏先輩に届いた気がして、なんだかそれだけで胸がいっぱいなくらい幸せな気持ちになった。
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