勝手に誘われんなや
イライライライラ
あー、イライラする。
休み時間、うたた寝しながら神崎を見とったらクラスの男が神崎に話しかけてきた。
そのうちいなくなるやろ、と思っとったのに全然いなくなるそぶりがあらへん。
神崎もへらへらアホ面さらしよって。
なんやねん、ほんまイラつく。
「ほんでな、こないだ映画観たいって言っとったやろ?」
「ああ、つい先週公開されたやつね。言ってた言ってた。」
うるさい奴やな、神崎は別にお前に対して映画に行きたいって言ってたわけとちゃうからな。
てか神崎が行きたがっとる映画なら俺も知ってるっちゅーねん。
それだけやなくて放映されとる映画館も上映時間も知っとるわ。
「まだ行ってないんやったら、今度・・・」
「おい、神崎。」
「あ、財前君起きたの?おはよう。」
「映画、俺と行くで。次の週末空いとるか?」
別に寝てへんわ、と思ったけどそれは気にせず、用件を告げると神崎は、へ、とアホ面をさらした。
まあ、さっきまでこいつにさらしとったへらへらしたアホ面よりはましやな。
「なんや、空いてへんのか。」
「や、空いてるけど。え、なんで・・・」
「ほな決まりやな。次の土曜、駅前11時半に待ち合わせな。」
遅れるんやないで、と言うと、神崎は、ちょっと待って待って待って!と俺の言葉を遮った。
「なんで、一緒に、映画に行くことになってるの、かな?」
神崎はほんまアホやなあ、とため息をついた。
「映画行きたいんやろ?俺も行きたいねん。せやから一緒に行くのが自然な流れやろ。」
まあ、ほんまは別に好きなジャンルの映画とちゃうけど、お前が友達にあんまり楽しそうに話すもんやから興味でただけや。
「いや、それは自然なのかな?」
自然に決まっとるやろ、わかるやんな、と目を細めて言うと、神崎は、自然、かも、しれないです、はい、と言った。
ほんなら最初から断ろうとすんなや。
「あの、神崎、」
「なんや、お前まだおったんか。」
残念やったな、俺と一緒に行くからお前とは行かんで、と思いながら睨むと、そいつはそそくさと立ち去った。
「あ、ちょっと・・・。ああ、財前君が怖い顔して睨んだからいなくなっちゃった。」
「お前がへらへらしながらあいつと話しとるからアカンねん。他の男と話しとる暇があるんやったら俺と話さんかい。」
いや、財前君寝てたから話せないじゃん、という顔で見てきたから、なんや文句あるんかと凄むと神崎は、なんでもないです!と言った。
次の土曜は神崎と映画か。
まあ、それなりに楽しみやな、と思いながら、なぜかゆるむ頬を片手で隠した。
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