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なんで見てくんねん


退屈な授業中、隣をチラッと見ると、隣の席の神崎は肘をついてすやすやと居眠りをしていた。

じっと見ていたら、首がカクッとなって目を覚ました。

授業中だと思いだしたのか、神崎は寝ていたのを見られてないか気にするように慌てて周りを見回した。

「、っ!」

あ、目あってしもた。

なんかこっちから逸らしたら負けの気がして、じっと見続けると、神崎もじっとこっちを見続けてきた。

なんや、目逸らすタイミング逃してもた。

なんか、ほら、猫と目があったら向こうが逸らしてくるまで意地でも逸らしたくなくなるやん、そんな感じ。

ずっと見ている間にチャイムがなって、授業が終わった。

「なんで見てくんねん。」

神崎はちょっと戸惑いながらこたえた。

「や、財前君が見てくるから見てるんだけど。」

「はっ、自惚れんなや。お前が見てくるから見とるだけや。」

確かに授業中は暇やからよくこいつを見てるし、休み時間はアホみたいに楽しそうにしとるからつい見てしまうし、掃除中とか何か用事任されとる時はなんか手伝ったろかと思って見とるけど、ただそれだけや。

「そ、そう。じゃあ気のせいかな?」

ははは、と若干ひきつった笑いをこぼして、そいつは俺から顔を逸らした。

なんかイラッとしたから、椅子に座ったまま神崎の腕を引っ張ってこっちを向かせた。

「なに目逸らしてんねん。こっちが見てんねんから、お前も見とけや。」

「え、横暴。」

神崎はちょっと不服そうに口を尖らせとったけど、大人しく俺の方に向き直った。

よし、それでええねん。ずっと俺のこと見とけや。と言うと、神崎は何故か顔を真っ赤にして顔を逸らした。

「喧嘩うっとんのか?見とけ言うとんのに、なんで逸らしてんねん。」

聞いとんのか、と腕を引くと、神崎は真っ赤な顔のまま、購買行ってくると言って教室から飛び出した。

あ、神崎、財布机の上に忘れとるやん。

はあ、しゃーないから届けてやるか。

購買へ少し速足で向かいながら、神崎はほんまアホやなと思ってちょっと笑った。


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