大好き2個
「一氏先輩!この映画おもしろそうやなー、って言ってましたよね。福引きで当てました。一緒に行きましょう。」
福引きで当てたペアチケットを一氏先輩に見せると、一氏先輩はちょっと不思議そうな顔をして首を傾げた。
「あ?ああ、その映画か。言ったな、おもしろそうやって。」
「なら、一緒に行きましょう!」
「なんで俺とお前が一緒に映画行くんや。同い年の友達誘えばいいやんか。」
一氏先輩はあんまり興味なさそうにネタ帳らしきものをめくりながら言った。
「と、友達とじゃなくて、一氏先輩と一緒に観たいんです!」
私が、めげるものか!と声をはりあげると、一氏先輩は、お前、と言ってこっちを見た。
よし、伝わった!
一氏先輩が好きだから一緒に映画に行きたいんですよ!デートっぽい雰囲気をかみしめたいんですよ!
「お前、・・・まさか友達おらんのか?」
伝わってなかったー!
「なんなんですか、一氏先輩のばか!一氏先輩が好きだから誘ってるに決まってるじゃないですか!」
「ああ、おおきに。でも俺小春好きやから。」
「小春」って名前を口にするときだけ、一氏先輩は少し優しい顔をする。
「ネバーギブアップ!!シーユーアゲイン!」
今日はもう最悪だーと思って、私が叫びながら一氏先輩のもとから走り去ると後ろから、英語の発音悪すぎや、と小さい笑い声が聞こえた。
振り向くと一氏先輩が片手を口にあてて笑っていた。
一氏先輩の笑顔が見られた。
もうそれだけで、今日は最高の日になった。
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