19
「ほな、ちょっと小屋ん中調べよか。」
おにぎりを食べ終わってからそう切り出すと、伊織は、うん、と頷いた。
調べると言ってもそんなに広い小屋でもないしすぐ終わってしまいそうやけど、と思いながら小屋の中を見回した。
ベッドが一つに、小さい食器箪笥とクローゼット、いつもおにぎり食べるのに使っとる窓際の小さなテーブルと椅子、蓋付きの木箱、水道のついた小さな流し台。
うーん、なんかありそうっつーたら、クローゼットと木箱くらいやろか。
クローゼットの両開きの扉を開けると、の中にはたくさん服が入っていた。
男物、女物、子ども服、サイズも系統もバラバラ。
「ここまで使っとる人の顔が見えへんクローゼットも珍しいな。」
夢ん中で、お兄さんになったりお姉さんになったり犬になったりしたって言うとったし、姿は固定やないんやろか。
「確かに、ふわふわスカートと作業用のつなぎが一緒に入ってるクローゼットって、なんか不思議な感じだね。」
そう言いながら伊織はふわふわスカートを手に取って、またクローゼットに戻した。ああいうん好きなんやろか。森から出たら一緒に美味しいもん食べよって思ってたけど、服屋巡りもええなー。あ、せやけど普通の公園でピクニックもええな。伊織、こないだ小屋の外でサンドイッチ食べた時楽しそうやったし。
おし、その為にもはよ手がかり見つけよ。
「クローゼット、やっぱり服しか入ってないね。次は木箱開ける?」
「せやな。」
横幅1mくらいありそうな木箱の蓋は思っていたよりは重かったけど、力を込めたら難無く開いた。
「うわあ、…なんつーか、」
「…片付け苦手だったの、かな?」
木箱の中身は、取りあえずものを詰め込んで蓋をしたって感じでめっちゃごちゃごちゃしていて、これを調べるのは大変そうやな、と伊織と顔を見合わて苦笑した。
「取りあえず、一個一個出して見てこか。」
「うん。」
木箱の中から手がかりになるようなもんないかと、一個一個出して床に広げると、全部出し終わった頃には床はもので埋め尽くされていて歩く隙間もなくなっていた。
「物多すぎやろ。なんやねん、このお土産もん屋で売ってそうな地名入りの提灯。なんで8つもあんねん、1個でええやろ。」
「わらの腰巻きに、木彫りのおっきなお面?…どこで売ってるんだろう。」
手がかりがなんかあるやろかと思ったけど、出てきたものは変なお土産みたいな物ばかりで少し落胆した。こんだけ頑張って一個一個調べた意味って、…はあ。
「まあ、なんにしても、旅好きな奴っつーのはほんまみたいやな。こんだけお土産もんあるし。」
「そうみたいだね。」
「これ以上調べられそうなとこもないし、片付けよか。」
なんの収穫もなかったなー、と少しへこんでいると、くいっと袖を引っ張られた。
「えっと、宝探しみたいで、楽しかったね。」
「くっ、ああ、せやな。」
俺を元気づけようとしてくれているらしい伊織に、なんだか嬉しくて笑いが込み上げてきた。しかも宝探しってなんやねん、いちいち可愛いな。
え、なんでそこで笑うの、と少し拗ねたような顔をする伊織の頭をくしゃっと撫でると、そんなんじゃごまかされません、と言いながらも表情が緩んでいたから、また笑ってしまった。
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