12
「神崎っ?…ああ、よかった、眠っただけか。」
フラフラした足で立って、俺の腕の中で泣いていた神崎は、ありがとう、と言ったのを最後に急にだらんと体から力が抜けた。
倒れたのかと焦ったが、よく見たらただ眠っているだけのようだった。
きっと、はりつめとった気が緩んだんやろな。
神崎をベッドまで運んで、自分もベッドのそばに腰かけて神崎の手を握った。
小さな手や。
抱きとめたときも、思っていた以上に小さな体に驚いた。
こんな小さな体で、一人でいっぱい抱えてたんやな。
閉じられた目の下には、うっすらと隈ができていた。
最近、あんまりよく眠れてなかったんかもしらん。
神崎に、絶対帰り方見つけたるなんて豪語したけど、どうしたらええんか、まだかいもく見当もつかへん。
どうしたものか、と考えていると、さっきまで穏やかな顔で眠っていた神崎が眉にしわをよせて、う、ん、と少しうなった。うなされとるんやろか。
「…、大丈夫、大丈夫やで。」
大丈夫としか言われへんけど、神崎は、森に入って来た。ほんなら出ることやってできるはずや。せやから、大丈夫。
眠っている神崎には聞こえないだろうとは思いつつも、手をしっかりと握ったまま大丈夫と繰り返し言うと、神崎はまた穏やかな顔に戻った。
俺が大丈夫って言って安心するんなら、何度だって言おう。
ほんで、ほんまに「大丈夫」になるようにしよう。
穏やかな寝顔を見ながら、改めて心に決めた。
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