自主練習が終わったあと、喉を潤すため食堂に向かうと夜も遅い時間なのに光が漏れていた。誰かいるのだろうか、そう思って何となく忍び足で近寄り中を覗くと、食堂の椅子に腰掛けて本を読む森村さんの姿が見えた。


「なに読んでるの?」
「!!!」
「あ、驚かせちゃってごめんね……って、あ…」

私が声をかけると森村さんは私の顔を見て驚いたあと、読んでいた本を勢いよくとじて自分の身体全体で隠した。だけど彼女の小さい身体では全て隠しきれず、私は彼女の本の題名を無意識に読みあげてしまった。


「動物図鑑…」
「……」
「森村さん、動物好きなの?」
「…うん」
「そっか〜。私もね、犬を飼ってるよ」
「犬…何犬、飼ってるの…?」


ふっ、と森村さんの緊張が和らいだように見えたので、私は彼女の反対側の席に腰掛けてにっこり笑いながら続けた。


「えっとね、真っ白な雑種だよ。ケン、って言ってとっても可愛いんだ。あ、写メあるよ。…はい」
「わ…可愛い」

ケンの写真を見せると、森村さんはほわっと笑った。優しい笑顔だなぁ、動物…ほんとに好きなんだね。
釣られて私まで笑顔になると、森村さんは少しだけ戸惑ったような表情になった。私はそれを気にしないようにして、話を続ける。


「森村さんはなんの動物が好き?」
「ウチは…鳥が、好き」
「鳥か〜小さくて可愛いよね、私も好きだなぁ。…あ、そうだ。この近くに鳥たちの森っていう鳥がたくさんいる小さな動物園みたいなのがあるよね。図書館の帰りに見つけたんだ〜」
「うん、種類も多くて、楽しかった、よ」
「あ、森村さん行ったことあるんだね!」
「……うん」
「…じゃあ、今度案内してもらいたいなぁ。森村さん鳥、詳しそうだし色々教えてもらいたいな〜。もちろん、森村さんが嫌じゃなければ、だけどね!」
「ウチは…嫌じゃない、けど。苗字さんは、ウチと一緒じゃ、楽しめないとおも、う」


視線を彷徨わせて落ち着きなくそう言った森村さんに、私はにっこりと笑いかける。
そんなことないよって、少しでも彼女に伝わりますように。


「私は、森村さん…好葉ちゃんと一緒にいきたいな」
「あっ……、う、ん…じゃあ、今度…行こう」
「うん!へへっ、やった〜!ありがとう好葉ちゃん!」


私がそう言うと、好葉ちゃんは少しだけ、少しだけだけど笑ってくれて。とても幸せな気持ちになりました。



20130604





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