苗字名前は分かりやすそうで、分かりにくい…なかなかに興味深い人間だと僕は思う。彼女も僕らと同じくサッカーはてんで素人。だけど僕らと決定的に違うところがある。…彼女はやる気に満ち溢れているのだ。

やる気があるといえば、井吹くんや野咲さんや瞬木くんもそう言えるかもしれないが、彼らには彼らで何か色々思うところがあるようで。少なくとも僕の目にはサッカーというものに本気で向き合っているのは、雷門の三人以外は彼女しかいない、そう映った。

彼女は努力家だが、失礼ながらその努力はあまり報われていないようだ。今日もキャプテンにドリブルを教えてもらっているようだけど、昨日や一昨日と全く同じ。まるで進歩がない。
だが彼女はそれでも構わないみたいだ。…まるで、努力する自分に酔っているようにも見える。……これは、考えすぎかな?




「興味深いな」
「何がですか?」
「やあ真名部くん、いや…苗字さんのことさ」
「…ああ、彼女のことですか。よく分かりませんよねぇ、彼女」
「そうだね、それに彼女には僕らのようにサッカーとは全く別の才能があるというわけでもないようだ」
「結構…言いますよね、君」
「ん、何がだい?」
「いえ…何でも、ないです」



それにしても。



「キャプテン私…今はサッカーできなくても、頑張って上手くなってみせますね!」
「うん、一緒に頑張ろう!」
「じゃあ私、キャプテンに教えてもらったコーンの特訓してきます!」
「また分からないことがあったら聞きにきてね!」
「はい!」



性格はとても素直。人当たりも良い。…というより、周りの人間にとても気を遣っているように見える、かな。他人からの評価を気にする子なのかな。でも目立ちたがりというわけでもなさそうだ。運動は得意ではない。僕も人のことを言えたものじゃないけど、…そういえば指を庇う仕草が多いな。ボールが飛んできたりしたら、反射的に握り拳を作り手を隠してしまうみたいだ。…手を使うなにかをしていたのかな?

キャプテンに教えてもらったらしい練習方法を黙々とこなす苗字さん。お世辞にも出来ているとは言い難かったけれど…彼女の顔は満足そうだ。…ふうん、やっぱり僕の予想は正しいみたいだ。だとすると、何故?何故あそこまでこだわるんだろう。



「まだまだ情報不足だな」



異色なメンバーの中で一番普通で、でも一番謎の多い女の子。
これから彼女を観察するのが楽しみだね。




20130531


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