「名前ちゃん、今時間大丈夫?」
「あれ葵ちゃん。うん大丈夫だけど…どうしたの?」
「クッキー作ったの、だから一緒にお茶しないかなって」
「わあ、いいね!やろうやろう!」
「ふふっ、じゃあ食堂に行こ?」



イナズマジャパンのマネージャー、空野葵ちゃん。とても優しくて頼れるみんなのお姉さんみたいな存在。彼女とは何度か話をしているうちにすっかり仲良くなって、最近ではこうして二人だけでお茶会をしたりすることもあるんだ。
葵ちゃんはお菓子作りがとても上手で、お茶会をするたびに私の胃袋は大満足。

食堂の椅子に座って二人で談笑しながらクッキーをつまむ。他愛もない話が続く中、そういえば、と葵ちゃんが話を切り出した。



「脱退試験、すごかったね」
「そうだね…あの監督にはホント、驚かされるなぁ」
「……名前ちゃん、試験受けなかったでしょ?私、嬉しかったな」
「うん、私はサッカー…続けたかったし、続けないとって思ってたから」
「…こんなこと聞くの、失礼かもしれないけど…。名前ちゃんは、どういう契約で…チームに入ったの?」
「私は…私の、契約は……」


あの日、わざわざ北海道の自宅まで私を訪ねてきた黒岩監督。最初はただただ恐ろしかった。なぜ私の事情を初対面の男が知り尽くしているのだろうか、と。でも、あの時監督に言われた言葉…私にとっての条件は、私の前に現れた光の道のように、思えたのだ。



「…ごめんね、葵ちゃん。今は、あまり答えたくないな。…でも、葵ちゃんさえよければ、私の気持ちの整理がついたら…聞いてほしい」
「そっか、わかった。…私はいつでも待ってるから!」
「うん…ありがとう」
「ところで名前ちゃんは好きな人はできた?」
「へ?」


葵ちゃんの優しさに感動して、ああ…いい友達ができたなぁ、と思っていたところでの突然の話題の大転換にガクリと椅子から転げ落ちてしまった。私が半笑いで葵ちゃんを見ると、彼女はにやっと笑いながら話しを続けた。



「これだけたくさんの男の子と生活してるんだよ?何もないわけがないんじゃないのかな〜って思って!」
「え〜、あんまりそういうこと考えて生活してなかったからなぁ…」
「名前ちゃんにその気がなくても、向こうがその気だったりとかはあるんじゃないかな」
「ええー…それはないよ。むしろそれって葵ちゃんに言えることじゃないかな」
「今は名前ちゃんの話!…そうだなぁ、瞬木くんと仲良いよね名前ちゃん」
「瞬木くん?…う〜ん、まあよく相談に乗ってもらったりするよ」
「私は瞬木くん推しよ!さわやかでお兄ちゃん気質だから、なんとなく名前ちゃんと相性良い気がするの。どう?」
「ど、どうって言われても……」
「皆帆くんとかともよく話してるよね?あと、鉄角くんとか。でも私は天馬もオススメだな〜、すごくいいやつなのよ」
「オ、オススメ…。あ、あのね葵ちゃん…私、みんなをそういう風に思ったことないからわからないよ」
「そうなの?じゃあもしドキドキしたり、気になる人ができたらすぐに聞かせてね!応援するよ!」
「あ、あはは…うん」


恋かぁ、…もしイナズマジャパンのメンバーの中で、そういう関係になるとしたら…、………あー、ダメだ想像するだけで恥ずかしい。やめとこ。









「真名部くん、苗字さんと仲のよい男性の名前が並べられた時に自分の名前が出なかったからってそんなに落ち込まなくてもいいじゃないか。これからだよ、頑張れ!」
「べ、べべべべつに落ち込んだりしてないですよ!変な事を言うのはやめてください!!」








「ん、何か今キッチンの方から聞こえなかった?」
「気のせいじゃない?(ニヤニヤ)」
「?」



20130624
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