なんだか学校が気になる潤は、翌日松林に電話をして先に公園へ行ってもらうことにした。そして自分は陽花戸中へ向かった。昨日の雨が嘘のように晴れて、青空が広がっていた。まだ誰も居ないグラウンドを横切って、校舎の近くまで移動する。



「マジン・ザ・ハンドーっぐあはっ!」

やってるやってる。倒れた立向居に近づき、手を差し伸べると立向居は驚いたように潤を見た。そしてその手を取り立ち上がる。立向居の顔は泥だらけだ。地面が昨日の雨のせいでぬかるんでるし、仕方ないといえば仕方ないけど。

「おはようございます潤先輩っ」
「おはよう立向居。すごい特訓だね」
「円堂さんに教えてもらったんです!俺、マジン・ザ・ハンドを絶対に習得してみせます!」
「うんうん、頑張れ」
「それで…その、…習得したら、俺も…」
「?」
「俺も、その…。や、やっぱり何でもないです!」
「そっか。じゃあ邪魔しちゃ悪いから私はこれで。あ、そうだ…これあげるよ」

目標があるのはいいことだ。がんばる後輩に元気をもらった潤は、エナメルバッグから小さな袋を取り出し立向居に差し出した。

「これは…?」
「クッキー。昨日焼いたんだ」
「せ、先輩の手作りですかっ?」
「うん。あ、安心して。味は兄さんが保障してくれてるから」
「いえ、そんなことじゃなくて…俺、嬉しくて」
「そう?よかった。あ、それと陽花戸のみんなには内緒だよ、それ」
「え…?」
「一人学校で頑張る立向居にご褒美。だからみんなの分はないのだ」
「っ、潤先輩っ!ありがとうございます!」
「あはは、どういたしまして」

可愛い後輩の頭を撫でると、嬉しそうに目を細める立向居。ホント、自分は立向居には甘いなぁなんて思いながらその頭から手を離す。

「じゃあ今度こそバイバイ。頑張ってね」
「はいっ!俺…頑張りますっ!」

立向居に別れを告げ、裏門の方へ向かう。確か雷門イレブンはそこに車を止めて寝泊りしているはずだ。
校舎の影から覗いて見てみると、後ろから肩を叩かれた。立向居かと思って振り返ると、予想外。雷門の人だった。ゴーグルにマントって、すごいなぁ。…この人、確かFFの決勝にいたよね。インパクト大だったから覚えてるよ。…確か…き、き…。あれ、なんだっけ。

「驚かせてしまったようですまない」
「いや、そんなに驚いてない、けど…」
「そうか。お前が本田潤、だな?」
「そうだけど。君は?」
「俺は雷門の鬼道有人だ。よろしく」

差し出された手を握り、挨拶をする。鬼道か、うん。覚えた。



人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -