「潤ー、行こうぜー!」

インターフォンが鳴ってガラリとドアが開く音がした。その後に聞こえた松林の声。
…インターフォンの意味が全くない。潤はため息をつきながら櫛を置いた。そしてエナメルバックを持ち襖を開ける。
玄関に行くと、兄がいた。その傍には同級生の松林に志賀。いつも学校へ一緒に行っているメンツだ。まぁ今日は学校には行かないんだけどね。昨日の夜、筑紫がメールで教えてくれたんだけど、今日は商店街の隅にある公園で練習を行うらしい。


「兄さん!ごめん、これから仕事なのに…」
「いいんですよ。松林くんと志賀くんと話すのはとても楽しいですからね」
「潤の兄ちゃんはホント優しいよなー!」
「ありがとうございます。松林くんも志賀くんもいつも潤を迎えに来てくれてありがとうございます。…それじゃあ気をつけて行ってらっしゃい」

潤が靴を履き終えたことを確認して、持っていた弁当を渡す兄。

「ありがとう兄さん。じゃあ行ってきます!」
「無理はしちゃ駄目ですよ?」
「分かってるよ!兄さんこそ体調悪かったんだから無理しちゃ駄目だよ?」
「分かってますよ」

ほがらかに笑う兄さんに手を振って、潤と松林と志賀は家を出た。


「潤の兄ちゃんって頭良さそうだよな」
「メガネかけてるしな!」
「志賀にはメガネかけてる人みんな頭偉く見えるんだね。じゃあ私もかけてみようかな」
「いや、お前は無理だって」
「えーそうなの?」
「でもなんだかんだ言って潤、頭いいよな」
「うわ、松林どうした。お前が潤褒めるなんて珍しいな。雪振るぞ」
「残念志賀。今は夏だよ」


かなりくだらない会話を続けながら、商店街を歩いていくと見えたのは近所の公園。
そこにはすでに陽花戸イレブンの殆どが揃っていた。


「おはよーみんな」
「潤、君はまた僕からのメールを華麗に無視してくれたね。雷門の人が来たよってメールも無視された気がするんだけど」
「おはよう筑紫。無視してないよ、見たし」
「潤。返信をしなければ無視したのと一緒だぞ」
「へー。…あれ?」

周りをキョロキョロ見回す潤。今日は立向居がいない。遅刻?いつもなら一番に自分に挨拶しにくるのに…なんて考える。
すると近くに居た黒田が潤に向かって話す。

「立向居なら学校に行ったぞ」
「え、なんで?雷門の人が使うんだよね」
「タイヤを持ってくるのが大変だからじゃないか?」
「タイヤ?なんでまた」
「円堂くんがタイヤを木に下げてそれを受け止めるって特訓をしているらしいんだ。それで立向居も始めたんだ」
「また無茶な特訓だね、それは」

当たったら相当痛いよね。あ、でもキーパーっていつもそのくらい強い力を受け止めているのかな。じゃあいい特訓なのかも。
なーんて思っていたらだんだんと曇り空に。そして雨が降り出した。あら。


「いきなり降り出すとはな…今日の天気予報は晴れだったぞ」
「お天気お姉さんもたまには嘘吐きたくなるんだよ」
「仕事になってないよね、それ」

建物の影で陽花戸サッカー部(立向居抜き)は雨宿り。幸い部員数は少ないので、なんとか全員入れた。
戸田が携帯でネットに繋いで天気を確かめる。


「今日は一日降り続けるらしい。仕方ないから今日は終わるか」
「まじかよー。傘持ってねぇ」
「……」
「どうしたんだ、潤」
「立向居が気になるから学校行ってみようと思うんだ」
「立向居もこの雨じゃもう帰ってるだろ。入れ違いになるかもしれないぞ」
「うーん。それもそっか」
「じゃあさっさと帰ろうぜ潤。俺濡れたから風呂入りてぇ」


行く時と同じように、志賀と松林の後について商店街を歩く。
なんなんだろ、この変な感じ。


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