雷門中の人たちが吹雪くんの付き添いで病院に行ったあと、陽花戸イレブンはグラウンドに集まっていた。


「そういえば潤。お兄さんの様子は?」
「さっき電話したら何ともないって。明日から仕事に行くらしいから、まぁ多分平気なんでしょ」
「そうか、それなら良かった…、あ」


戸田が校門の方を見て、頭を下げる。同じように視線を向けると、雷門の監督がいた。雷門の監督は潤を見るとこちらへと近寄り、そして頭を下げた。



「貴女が本田潤さんね。私は雷門の監督の吉良瞳子よ。陽花戸中に素晴らしいストライカーがいると聞いてやってきたの。私たちと共に来てくれないかしら」
「今は遠慮させていただきます」
「お、おい潤…」
「…分かったわ。それと、あなたがキャプテン?」
「え、ええ…」
「運ばれていった子が回復するまで福岡に滞在しようと思うの。悪いんだけどグラウンドを貸してもらえないかしら」
「え…あ、わかりました」
「そう、じゃあ失礼させてもらうわ。…本田さん、いい返事を期待しているわ」

そういうと吉良監督は颯爽と去っていってしまった。それと同時に陽花戸イレブンは戸田に詰め寄る。



「キャプテン、俺たちの練習はどうするんだよ!」
「なーんで普通に返事しちゃってんだよ!」
「いや、だって…雷門のみなさんは宇宙人を倒すという大事な仕事が…」
「あーあーあー、みなさんうるさい!キャプテンである戸田が決めたことなんだよ、口出さない」
「だけどさ、潤!」
「…すまない皆。練習場所は校長先生に言って何とかしてもらう。…って、どうしたんだ立向居」


先ほどからずっと黙って肩を震わせている立向居。どうしたのかと思い傍にいた松林が肩を叩くと、顔をあげた。立向居の顔を見て、陽花戸イレブンはぎょっとした。彼の顔は涙でぐちゃぐちゃだったのだ。


「ど、どうしたんだ?立向居」
「うっ…俺、俺…」
「おい、潤。お前が慰めろよ」
「え、…わかったよ」


志賀に背中を押され、立向居の頭を撫でようとすると彼は潤の腰に抱きついてきた。それもものすごい力だったため、潤の口からぐぇっと情けない声が出てしまった。


「たち、む…苦し…」
「俺…俺、先輩が、先輩がいなくなるの、嫌ですっ!」
「いや…うん、まぁ。ごめんね立向居。それとまだ行くかどうかは決まってないから」
「そういえば何で断ったんだい?すごいじゃないか、雷門中に誘われるなんて」
「…今は入りたくない。私が入っても、彼らはなにも変わらない」
「そうか?お前は俺たちから見てもすごいストライカーだと…」
「違う。そうじゃない。そういう意味じゃないんだよ。まぁとにかく今は練習しよう。筑紫、パス練しよう。パス練」
「え、あぁ。わかったよ」


潤は立向居の頭を優しく撫でると、彼を自分から剥がして筑紫とともに体育倉庫へとかけていった。
潤の最後の言葉に一同は首を傾げたが、明日からグラウンドが使えない事実を思い出し、各々練習を始めた。その場に残ったのは立向居だけだった。





「俺…、先輩にいつまで経っても追いつけない。肩を…並べることは、無理なのか…?」


涙を拭いた立向居は決断した。



20130527 修正
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