潤は私にとって大きく輝いて見える、ヒーローのような…そんな存在だった。
小さく泣き虫だった私を守り、手を引いてくれたナイト。私は彼女の笑顔を見るだけで満たされ、そしていつまでも傍にいたいと思っていた。
だから、彼女が私の前から姿を消した時はひどく動揺した。…だけど今再びこうして隣に立つことができた。…私はあの時のより強くなったんだ、…ねえ潤、私を見て。強くなった私を見て。今度は私が君のナイトになるから。だから、私を見て。



だが、悩ましげに寄せられた眉、細められた彼女の視線は一人の少年に向けられていた。
…立向居勇気、あのナイト気取り。弱者のくせに、何故お前は彼女を、潤を…。

私は唇を噛み髪をガシガシと梳く。まだ、カオスが勝っているが流れを掴んでいるのは確実に雷門だ。
立向居勇気のあの自信と希望に満ちたあの瞳を見るとイライラしてどうしようもない。他の奴らもだ、潤が苦しそうな表情をするたびに声をかけている。やめろ、貴様らが話しかけるな。奴らの邪魔をするように私も何度か潤に声をかけるが、彼女はこちらを見て少しだけ笑うだけで、私を頼ってくれもしない。潤の態度に己の無力さとを痛感し、そして激しく妬ましかった。彼女の視線の先にいる立向居勇気が、妬ましかった。


そうこうしている間にカオス側のボール運びでミスが連発し、雷門の選手にカットされゴールを許してしまう。それからというもの、雷門にどんどんと点差を詰められ、10-7まで追いつかれてしまった。



「う、は…ぁ、…はぁ…」
「本田!大丈夫か?」


すると、ついに潤がガクリと膝をついてしまった。それに気づいた私が彼女の傍に寄る前に、雷門のゴーグルをつけたゲームメーカーが彼女に駆け寄った。それを見て、雷門の選手が次々に彼女に駆け寄り声をかける、…あの立向居勇気も駆けてきて、彼女の肩に手を触れた。その瞬間私の怒りが頂点に達した。



「やめろ!!」


立向居勇気から潤を乱暴に引き離す。潤の身体に力は入っておらず、私は彼女を抱きかかえるようにして地面に座り、彼女の腕を掴んだまま雷門の奴らを睨みつける。
すると立向居勇気が立ち上がり、静かに口を開いた。



「…貴方たちは、潤先輩の何なんですか」
「前にも言っただろう、潤と私たちは、君や雷門の連中なんかには到底解らない、深く強い絆で繋がっているのだ」
「俺の質問に答えてください!潤先輩は、貴方たちとどういう関係なんですか!」
「……私たちは君たちよりも潤と過ごした時間が圧倒的に長いんだ。同じような境遇で巡り合った私たちは同じ場所で育ち、同じ時間を過ごした家族だ。君たちは私たちに潤を返せと言うが、それはこちらのセリフだ」
「家族…」
「そう、家族さ。だから君たちの入り込む隙間なんてない、潤は君たちのことなんて考えてすらいない、視界にすら入っていないんだよ!」
「おいガゼル、喋りすぎだ」
「君だって同じことを思っていたはずだよバーン」
「…いいからコイツ連れて戻ってこい」



何も言えなくなった立向居勇気を鼻で笑いながら、潤の腕を取りカオスの面々の下へ向かおうとした時だった。




「でも俺は、潤先輩の後輩だっ!陽花戸や雷門の皆さんは潤先輩の仲間だ!それにたとえ先輩が見ていなくても、俺が潤先輩を見ています、見ているんです!」
「ほんっとうに目障りな奴だな。潤は私のものだ、…本気で潰してあげるよ」


立向居勇気を睨みつけ潤の腕を引っ張る。
チラリと盗み見た彼女の瞳は揺れていた。私はまた、自分の唇を噛んだ。




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