キャラバンの上で円堂守は立向居と共に星空を見上げていた。円堂の隣には吹雪がいたが、どうやらもう眠ってしまったようで、何一つ言葉を発さなかった。
東京よりも星が近くに見えて美しい。いつまでも見ていたい…と円堂は思った。
そしてふとした疑問を立向居にぶつける。

「なぁ、そのエースストライカーの本田ってどんな奴なんだ?」
「潤先輩ですか?…そうですねぇ」

立向居は潤の姿を頭の中に作り出す。彼女はとても優しい、そして綺麗だ。笑った顔も、少し寂しそうな顔も、困った顔も、怒っている顔はあまり見たことがないけど…でも、どれもどれも立向居には美しく見えた。
大好きな先輩。憧れだったそれは、いつの間にか恋心に変わっていた。それを自覚した時、潤の顔をしばらく直視できなかったことも覚えている。

「立向居…?お前顔真っ赤だぞ?」

円堂に言われて、自分の世界に入っていたことにようやく気づく。すぐに謝りそして円堂にどう伝えるか悩んだ。
自分の尊敬している円堂に、どうやって自分の大好きな潤のことを伝えるか。大好きな二人には、やはり仲良くなってもらいたい。そのためには円堂さんに悪い印象を与えないようにしなければならない。責任重大だ。

ど、どうしよう…何て言おう…。暫く悩んでいると、円堂から助け舟が出された。自分が一番望んでいなかった方向に…

「立向居がそんなに悩むほど…変な奴なのか?」
「ち、違いますううっ!」
「あ…そ、そうか」
「…っ、はい。…潤先輩は、とても強い方です。とても頼りになる、すごい人です」
「へー…すっげー奴なんだな!俺、本田に会うのが楽しみだぜ!」
「お、俺も早く先輩に会いたいですっ!」

だが翌日、晶の体調はまた悪くなり潤は兄の看病をするため部活を休んだ。
その日は陽花戸と雷門で試合をして、そして…





「ヒロト…お前宇宙人だったのか…?」
「さぁ、円堂くん。サッカー、やろうよ」







「はっ、はっ…っ、なんでこんな時に…」

潤は通学路である市街地を走っていた。数十分前に戸田から連絡を受けたからだ。
最近ニュースになっているエイリア学園が陽花戸中に現れたらしい。聞けば彼らは無差別に学校を破壊しているらしいではないか。
自分の学校が破壊されて…、自分の仲間が傷つけられてたまるか!潤は兄に謝りすぐに陽花戸に向かった。戸田が何やら他にも言っていたが、聞かずに電話を切ってしまった。まぁ後で謝ろう。




陽花戸中に辿り着いて見上げると、校舎はまだ壊れていない。グラウンドまで走ると、見慣れない黄色のユニフォームと白いユニフォームが戦っていた。
スコアボードを見ると、雷門中0・エイリア学園ザ・ジェネシスが…20?
戦っていたのは陽花戸中イレブンじゃなく、雷門イレブン?あの、FFの優勝校の…でもなんで…。あ。

そういえば同級生の筑紫から、今雷門イレブンが来てるんだってメールがあったんだった。あまり興味がないので頭にしっかり入ってなかった。
ということは、陽花戸の代わりに雷門が戦ってくれているのか。…まぁ今はともかく試合を見守るか。

そう思い、再びグラウンドを見た瞬間だった。
エイリアの選手がシュートを放ったところに雷門の選手が突っ込んでいくのが見えた。


「なっ…!」

潤は思わず息を呑んだ。エイリアの選手のシュートは今まで見たことがないくらい強力なものだった。それに突っ込んでいった雷門の選手に当たり、軌道こそ反れたがあの選手は怪我ではすまないのではないのか…?

潤は急いでジャージのポケットから携帯を取り出し、救急車を呼んだ。
そして焦る雷門イレブンの下へ走って向かう。


「頭を動かしたら駄目だよ、救急車を呼んだからそのままにしておいて」
「え、あ、潤先輩!」
「こいつが…本田?」
「よろしく、雷門の皆さん。とりあえず自己紹介はまた今度。…」

潤は倒れた雷門の選手を見る。名前は吹雪というみたいだ。…彼はボロボロに傷ついていた。とにかく今は救急車を待つことしかできない。
すると後ろから足音が聞こえてきた。振り返るとエイリア学園の…先ほどあの強力なシュートを放った選手がこちらに向かってきていた。吹雪くんの様子でも見に来たのかな、と思ったがそいつの視線は潤に向いていた。

「君は…」
「…何か、用かな?」
「……君は、…かい?」
「え…」

潤は驚いてそのエイリアの選手を見るが、彼はすぐに仲間に呼ばれてその場を去ってしまった。
ドキドキと潤の心臓は跳ねる。最後に言われた言葉が気になって仕方がない。だって彼は…自分の、…潤の名前を呼んだからだ。
何故、どうして…?自分の知り合いに宇宙人なんていないはずだ。なのに、どうして私の名前を知っているの…?

そこで救急車がやってきたので、潤は一度考えるのを止めた。それと同時に、胸に何か重いものが突き刺さったような気がした。



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