緑色の髪の毛男の子は、私を見て微笑んだ。真っ赤な瞳で私を見上げて、キラリと光る星のネックレスを差し出した。


「これは?」
「プレゼントだよ、潤はこういうの好きでしょ?」
「星…綺麗だね、うん好きだよ…君…は?」
「俺も好きだよ。…ここに来た晩に、潤と一緒に星を見たの…覚えてる?」
「覚えてるよ、本当に綺麗だったよね」
「俺は絶対に忘れない。一番の友達の潤と見た、あのたくさんの星を…忘れない」
「…私も、忘れないよ」



星は輝いていた。
だけど今の私には、ちょっと眩しすぎる。








ホイッスルの音で目が覚めた。
ゆっくりと身を起こしてスコアボードを見ると、1対2…。イプシロン改との戦いは、雷門の勝利だった。

ズキリ、と潤の左目が痛む。そして、段々と頭が覚醒してくる。…それと同時に潤の心を支配したのは、恐怖だった。
意味のわからないことばかり思い出す、自分の記憶。そして、シュートを打った後の皆の顔…。それが、左目を隠す前に気味悪がられた…その時のクラスの皆の視線と似ていた。怖くて怖くて仕方がない。情けないかもしれないけど、人の目を気にしてしまう。…自分は弱い。


すると、誰かが駆け寄ってきた。…心配そうに顔を歪めている立向居だった。

「潤先輩…」
「たち、むかい…」

潤は無意識に立向居に手を伸ばした。…だけど、立向居が手を握り返してくれることは無かった。


「せ、先輩は…エイリア学園と、何か関係があるんですか…?」
「!!」


立向居の、視線が怖かった。
陽花戸のみんなは、どんなことがあっても自分を信頼して、疑わないと…思っていた。それくらい、自分も陽花戸のみんなを信頼していた。自分は、エイリアなんて関係ない。立向居だって、それくらい分かるよね?だって私は、ずっと陽花戸にいたし……、ずっと、陽花戸にいた?


私には記憶がない。9歳以前の記憶がない。
その空白の9年間の間に、エイリアと関わっていたということなのだろうか?あのワケの分からない夢は、9歳以前の記憶なのだろうか?…でも、そんな…。じゃあ私は一体何者なんだ?何で兄さんに引き取られた?何で陽花戸にいる?なんで、なんで、なんで?


頭を抱えて座り込むと、立向居が慌てた様子で駆け寄ってきた。私に触れようとする手…、何故だか触られたくなくて払いのけてしまった。


「せ、んぱい…」
「……」

立向居の泣きそうな表情は、掻き消えた。なぜなら、青い光が辺り一面に差したからだ。
そして、その光が晴れると…一人の男の子が立っていた。

私は、無意識に彼の名前を呟いた。


「ふう、すけ…」
「…潤」

彼は夢で見た、私の後ろをずっとついてまわっていた男の子だった。
風介は嬉しそうに私に近寄ってきて、優しく頭を撫でる。


「会いたかった、潤…。迎えに来たよ」
「迎えに、来た?」
「…君のいるべき場所はこんな所じゃない。君のいるべき場所は…」
「っ、私…の、いるべき…場所…うううっ、っ…私は、私は…何なの?…わからない、思い出せない…怖いよっ…」
「ああ…可哀想な潤。もっと早く見つけてあげれば良かった、こんなに取り乱して…。どれもこれも…お前達のせいだ!」

私を自らの腕に閉じ込め、そして低い声で怒鳴る風介。彼を知らない“はず”なのに、何故だか彼の腕の中は心地が良かった。…やっぱり、あの夢は私の過去の記憶なんだ…。


「っ…、潤先輩を放してください!」
「君がグランの言っていた、“ナイト気取り”か…。君は潤の何なんだ」
「お、俺は…っ」
「何も出来やしないくせにいい気になるな。君は…君たちは何も知らないだろう?潤の秘密を」
「本田の…秘密だと?」
「…ねえ、潤。思い出したいだろう?君の空白の9年間…。そして、その目が光を失った理由を」
「!!」

風介に耳元で囁かれるその言葉に、私は反応する。風介の言う通り、私は思い出したい。…“私”を思い出したい…!
ぎゅっと風介のユニフォームを握ると、彼は満足そうに笑った。


「潤先輩…!」
「…ずっと君だけを見続けるよ、私は…君を信頼している。…ずっと君だけを見ていたからね」
「風介は私を見てくれる…」
「そう、だから…一緒に行こう。…君の本当の居場所へ」


私が風介のユニフォームを掴む。それと同時に、風介が雷門に負けたイプシロンに向かって青い球体を投げつけた。そして、辺りは再び真っ青な光に包まれた。
それと同時に、浮遊感が私を襲う。…だけど、何も考えることができなかった。私は風介の腕の中で、そっと瞳を閉じた。



20130527 修正
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