綱海との特訓で、円堂が新たな必殺技を手に入れた。
「正義の鉄拳」というらしい。…なるほど、これか立向居の言っていた円堂の必殺技は。

正義の鉄拳を披露した円堂の周りに、皆が駆け寄ってく。…だけど、一番に駆け寄ると思っていた立向居は、少し離れた場所で首を傾げていた。


「どうしたのさ、立向居」
「あ、潤先輩…。い、いえ…な、何でもないです…」
「?何かあるのなら、ハッキリ…退け立向居!」
「え…、う、うわあ!」


立向居のユニフォームを掴み、すぐにその場を離れる。それと同時に私たちがいた場所に、黒いサッカーボールが落ちてきた。
そして、煙が晴れた頃に姿を現したのは…。


「イプシロン!」

イプシロン…、名前だけなら一之瀬に聞いたことがある。
これまで、何度か雷門イレブンと対戦してきた、エイリア学園のチーム…。そうか、こいつらが…


「我々はパワーアップして、イプシロン改となった。…我々は、雷門に勝負を挑む!」
「ジェネシスの命令か?」
「命令ではない。デザーム様、そして我らイプシロン改の意思だ」
「…もう一度楽しみたいのだ。実力が拮抗する者同士、ギリギリの戦いの緊張感…高揚感、あの抑えられない興奮を感じながらお前達雷門を倒す。これ以上の理由がいると思うか?」
「っ、そんなお前らの都合だけで戦えるかよ!」
「断れば、その辺の学校の一つや二つ破壊することになる」

はあ、なんてめちゃくちゃな頼みだ。
いや…そもそもこれは頼みではなく命令だ…。まったく。


「彼らに勝てなければ、エイリア学園最強のザ・ジェネシスを倒せるわけがない」

吉良監督の言葉はもっともだ。
自分も陽花戸でジェネシス戦を少しだけ観戦したが…、ありえないテクニック、ありえないパワーの持ち主ばかりだった。
特に…あのグランという男、あいつのシュートはとんでもない。

そのジェネシスよりは下だというイプシロン改、…ここで倒しておけば、また一歩前に進めるだろう。




「今日こそあいつらと決着をつけるんだ!」

綱海も一緒に戦ってくれることになり、テンションがあがった雷門イレブン。
円堂の掛け声と共に皆が拳を天に突き上げる。

だけど、それに参加せずにイプシロン改のいるベンチをずっと見つめていた男がいた。…吹雪だ。
すると吹雪が見ているのに気付いたのか、敵のキャプテンが彼の方を見て、ニヤリと笑った。


「…吹雪?」
「…あ、潤さん…」
「どうかしたの?」
「…ううん、何でもないんだ」

困ったように笑う吹雪は、マフラーを少しだけ触った。
よく練習中にもマフラーを触るけど、癖なのかな?


「おーい、吹雪!本田!フォーメーションを確認するから集まれだってー!」
「ああ、分かった円堂!…行こっか」
「う、うん…」






今回は私の1TOPらしい。
敵ボールで、試合が始まる。相手がこちらに突っ込んでくるのをマークしていたら、相手の選手が驚いたような顔で潤を見てくる。


「お、お前は…!」
「?」
「メロトン、こっちよ!」
「っ、」


メトロンと呼ばれた彼は、女選手にパスを渡す。チッ、取れなかった…!
すぐにボールを追おうとしたら、メトロンに腕を掴まれる。


「お前、今まで何処に…!」
「…え?」
「メトロン、何をしている!早くボールを追いかけろ!」
「っ、ああ!」


メトロンは潤の腕をパッと放すと、他の選手同様ボールを追いかけていった。
だけど、おかしいのは彼だけではなかった。
他のイプシロンの選手も、潤とすれ違うたびに何度も見てくるのだ。


…何なんだ、全く。意味が分からない…!


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