一之瀬が加わり、パスが前に繋がりやすくなる。
鬼道の指示でパスを繋げ、一之瀬がドリブルであがっていく。…完全に流れが変わった。

攻めて守っての繰り返し、すると鬼道にボールが渡り、それをリカにパスした。…が、それを綱海が空中でキャッチした。
それを近くにいた選手にパスし、再び攻防戦が始まる。…だけど、残り時間は僅かだ。…このまま守りきらないと!


一之瀬にボールが渡りシュートチャンス。だが、綱海にボールを奪われてしまった。
…だけど、大海原の選手を全員でマーク。パスも出せない状況。…隙を見て奪いに行くしか…ん?

いきなり綱海がシュートを打つ体勢になった。ま、まさかディフェンスエリアから打つのか!?
綱海がボールの上に乗り、まるでサーフィンをしているかのように波に乗る。そこからオーバーヘッドでボールを蹴る。波を裂き、シュートがゴールに突き進む!

円堂が応戦し、何とか弾いたが…。あんな遠くから打ったのに、あの威力…凄い。
するとここでホイッスルが鳴り、試合終了。



凄いシュート…、凄いシュート、…凄い、シュート?
何だか引っかかるその単語。…また、だ。何か…思い出せそうなんだけどな…。何か…







「潤、私と一緒に凄い技を作らないか?」
「凄い技?」
「ああ、シュートの技だよ。回し蹴りでボールを蹴る技なんだけど、矢のようにゴールに向かっていくんだ。絶対零度の闇を相手に向かって放つんだ…。とてもかっこいいと思わないかい?」
「絶対零度の闇はよくわからないけど…、シュート技かあ…かっこいいね!うん、いいよ!やってみようよ、風…」








「っ!!!」
「潤先輩?どうかしたんですか?さっきからずっと黙って…」
「ふ、う…」
「ふう?」
「ふう、すけ…?」
「ふうすけ?誰ですか…?」
「……あ、いや、な、何でもないよ。ごめん、立向居…心配かけちゃって」
「?…あ、先輩。今から大海原の人たちとバーベキューパーティーをするらしいですよ!先輩も早く行きましょうよ」
「…うん」




ふうすけ。
よく私の後ろに着いてきて、遊んだあの子は一体誰?

…とりあえず、分からないことを考えても仕方ない。とにかく、立向居について皆のもとへ向かった。









バーベキューを食べている時に、ポケットに入れておいた携帯が震える。
お皿に串を置き、騒いでいる皆から距離を取って、携帯を開いた。…戸田、だ。


「…もしもし」
『ああ、潤か?…久しぶりだな』
「うん…久しぶり」
『どうした?元気がないようだが…』
「…ねえ、戸田」
『?』
「私、何か変なんだ…」
『変?…何かあったのか?』
「……嘘」
『はあ?』
「くっ、あははは…こんな簡単な嘘に引っかかるなんて…やっぱり戸田だねえ」
『…おい潤』
「あははっ、ごめんごめん。何だか久しぶりに戸田をからかいたくなってさ。どう?皆元気にしてる?」
『…、次はないからな。…ああ、皆元気だ。だけど…少し寂しいかな』
「寂しい?」
『ああ、やっぱり二人も抜けると寂しいな』
「…ねえ、戸田」
『どうした?』
「…戸田は、待っててくれる?」
『…ああ、待つよ』
「……ありがと」


それから暫く雑談をして、電話を切った。
大丈夫だ、怖くなんかない。…何が起きても、陽花戸の皆は味方なんだから。

何故だか分からない不安に蓋をするように、私は心の中でずっとその言葉を唱え続けた。




20130527 修正




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