幾分か気分も落ち着き、立向居と二人でみんなが練習している場所まで行こうとキャラバンを降りた時だった。
本田ー、立向居ー!っと、円堂が呼ぶ声が聞こえた。見ると、雷門イレブンのメンバーがぞろぞろとこちらへ戻ってきていた。


「練習が終わったのかな」
「それにしては…随分と早いと思いますけど…」

二人で一行がこちらへ戻ってくるのを待っていると、その中に綱海がいるのが見えた。あと、知らない男の子。
その男の子は私の前に来ると「もう体調はよくなったのか?」と笑顔で聞いてきた。まあ…と答えると、そうかそうか!と豪快に笑う。えーっと?

助けを求めるように鬼道のほうを向くと、「自己紹介がまだだろう、土方」と呆れたように言った。


「おおっ、そうだったな!オレは土方雷電だ!この辺に住んでるんだ」
「土方はサッカーめちゃくちゃ上手いんだぜ!」
「へーえ、私は本田潤。よろしくね、土方くん」
「土方が病院を手配してくれたんだ」
「じゃあ恩人だね、ありがとう」
「礼を言われるほどのコトはしてねえよ!こっちこそよろしく頼むぜ?」


土方くんに手を差し出され、握る。ゴツゴツした手…、逞しいな。
それにしても、綱海といい土方くんといい…沖縄の人に大分お世話になったな、自分。

土方くんは弟たちの世話があるというので、一旦家に帰るらしい。もう一度お礼を言って別れた。
すると、今度は綱海が笑いながら潤の前に顔を出す。


「よぉ本田!体調よくなったんならさ、一緒にサッカーしねえ?」
「綱海、サッカーやってるんだ」
「円堂たちに感化されてよ、自分の中学のサッカー部に入部したんだよ!それで、今雷門イレブンを練習試合に誘いに来たんだ」
「へえ、楽しそうだね。いいね、やりたい」
「よっしゃ、決まりだな!」
「本田、運動しても大丈夫なのか?」
「まあ、大丈夫でしょう。一日しっかり休んだし、そろそろ身体を動かさないとなまっちゃう」
「じゃあ決まりだな!大海原中っていうんだけどよちょっと遠いから、キャラバンとやらで行くんだとよ!」
「オッケー」


練習試合かー、本当に久しぶりかもしれない。
キャラバンに乗り込み、隣に立向居が座るのを確認して、目を閉じる。









「潤先輩、起きてください!すごいですよっ!」
「ん…」


がくがくと揺さぶられる、不快感で目が覚めた。潤を揺すって起こそうとしているのは立向居。彼を軽く睨んだが、そんなことお構いなしに立向居は興奮したようすで窓の外を指差す。
視線をそちらへ向けてみると…


「え…」
「すごいですよね!海の上に学校があるんですよ!」

大海原中は海の上に建っていた。さすが沖縄、海はとても綺麗で泳いでいる魚も見える。まるで、リゾートに来た気分だ。
どうしても陽花戸と比べてしまう。陽花戸は普通の学校だ。他と比較できるところがあるとすれば…少々ボロっちい所だろうか。まあ皆仲良しだし、面白い学校だけど。

キャラバンから降りると、一足先に降りていた壁山が何かを抱えながら潤の方へやってくる。


「本田さん、これどうぞッス!」
「これは?」
「ヤシの実ジュースッスよ!」
「あ、ありがとう。でもこれどこで…?」
「それは企業秘密ッス」
「そ、そう」


試しに一口飲んでみると、薄味で青臭い。だけど甘い。…そんな味だ。
でもまあ、思っていたよりは美味しかったのでそのまま飲み続ける。ありがとう、壁山。


「…で、肝心のサッカー部はどこにいるんだ」

鬼道の言葉で気付く。サッカーグラウンドまでやってきたはいいが、サッカー部どころか人っ子一人居ない。


「そういえばそうですね…って、ああっ!」

春奈の叫び声と共に聞こえたのは、ひゅるひゅるひゅるという音。…あれ、この音どこかで…
すると、オレンジ色のアロハシャツを着たおじさんがいきなり現れた。


「サプラーイズ!」

そんな掛け声と共に、ユニフォームを着た少年少女が『歓迎!雷門中』と描かれた大弾幕(しかもかなり派手)を持ちながらワイワイとやってきた。
監督らしきおじさんが円堂に駆け寄ると、満面の笑みで驚いたかと問う。


「この人が監督…?」
「おお、ノリがいいだろ?」


そんなノリのいい大海原の監督は、吉良監督をナンパしていた。…なんか、疲れる。



20130527 修正
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