「これは…完全に風邪だな」
「…ううっ、さいですか」

あの後練習が終わったのか、小屋にみんながやってきた。多分今日はここで寝泊りするのだろう。
なんだかぼーっとするんだよね、と鬼道に伝えたところ、体温計を持ってきてくれたので測ってみたら…

「うつしちゃ困るから、あっちの物置で今日は寝るよ」
「そうだな…。…布団を運んでやる。少し待っていろ」
「ありがとう、鬼道」
「潤先輩っ!」
「大丈夫だよ、立向居。少しぼーっとするだけだから、すぐ治るって」
「…早く、一緒にサッカーしましょうね」
「分かってる」
「本田、行くぞ」

布団を担いだ鬼道に呼ばれ、潤は物置へ向かった。物置といっても綺麗に片付いていたので、全然床で眠れる。
鬼道が布団を敷いてくれたので、潤はそこに潜り込んだ。電球が一つしかないので、明るくない。眠るのには丁度いい。すると物置の扉が開き、木野が入ってきた。

「潤ちゃん、荷物ここに置いておくね?」
「ああ、ありがとう」
「今日着ていたジャージも、洗濯して入れておいたから」

そういえば、目が覚めた時は違う服を着せられていた。…着替えさせてくれたのかな、いやはやありがたい。
木野にお礼を言うと、彼女は優しく笑って「お大事に」と言って物置から出て行った。

「それじゃあ俺も行くぞ」
「布団ありがとう」
「ああ、何か必要なものがあればいつでも声をかけてくれ。隣にいるからな」
「分かった」
「早く治せよ?」

鬼道はそう言うと物置を出て行った。すると、薄暗い部屋の中で何かが光った。…携帯だ。
起き上がり鞄に手を伸ばし、携帯をとる。着信…兄さんからだ。

「もしもし?」
『潤、調子はどうですか?』
「風邪」
『風邪…ですか?体調には気をつけろとあれほど…』
「ごめん…」
『…本当に元気が無いですね。ちゃんとご飯は食べましたか?』
「食べてない…」
『はあ…、いいですか?風邪のときはしっかり食べることが大事なんですよ。栄養をつけて、早くよくなってくださいね』
「わかった」
『じゃあ、今日は辛いでしょうからこれくらいにしましょうか』
「…うん。ごめんね」
『…いえ、それではおやすみなさい』
「おやすみ」

電話を切ると、それを枕元に置く。あーあ、本当にタイミングが良いんだか悪いんだか。でも、久しぶりに兄さんの声を聞けて落ち着いたな…。じゃあそろそろ寝よう「邪魔するぜ!」

バンっ!と物置の扉が開き、入ってきたのは円堂と…髪がピンクの男だった。…誰?
そんな登場をした二人の後ろで、立向居と木野が怒っている。

「ちょっと!潤ちゃんは病人なのよ?」
「そうですよっ!先輩はっ…「いいよ木野、立向居」

潤はゆっくり起き上がり、訪問者を見る。

「円堂、どうしたの?」
「綱海がさ、身体にいいもの食ったら風邪もぶっとぶって!美味い料理を作ってくれたんだ!」
「綱海?」
「ああ、今日お前を助けてくれた奴だよ!」
「ああ…あの時のサーファーさん?」
「綱海条介ってんだ!よろしく頼むぜ?」

ニカっと太陽のように笑った綱海。円堂の笑顔も、太陽みたいだけど…綱海のソレは…なんというか真夏の太陽というか…眩しかった。もちろん良い意味で。

「本田潤、よろしく。今日は助けてくれてありがとうございました」
「おう、よろしくなっ!ほら、これ!獲れたてだから美味いぞっ!」
「ありがとう」
「潤、早くよくなって一緒にサッカーしような?」
「もちろん」
「はい、そこまで。潤ちゃん、ご飯食べたらお皿はそのままで大丈夫だよ、また後で回収しに行くから」
「ありがとう木野。じゃあ今度こそおやすみ。綱海、ありがとね」
「おう!じゃあなっ!」

今度こそ一人になる。
とりあえず、綱海が作ってくれた料理を食べた。…うん、美味しいな。
はあ…やっぱり少し辛いかもしれない…。料理を食べ終わったら潤は、すぐに布団に潜り込みそのまま深い眠りについた。


20130527 修正
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