パンうまい。うまうま美味い美味い。
夜中にお腹が空いたのでキャラバンの上に上って星空を見上げながら売店で買ったパンを食べる。夜中に食べたら太りますよ!と兄さんに怒られそうだ。ちなみに、今日はパーキングエリアで車中泊。みんなキャラバンの中で椅子倒して寝てます。キャラバン便利だなー。そういえば今日一日携帯見ていない気がするなーと思って電源をつけたらメールが2件きていた。
一通は兄さんからで「何をしましたか?体調は大丈夫ですか?何を食べましたか?」とのこと。ありのままに打ち込み、送信した。兄さんの携帯は常にサイレントだから、夜中に送っても平気だろう。パンをもう一口食べて、オレンジジュースをズビッと一口。そして2件目のメールを開いた。筑紫だった。「やあ、楽しい?立向居は元気にしてる?早く人の名前覚えるんだよ」とのこと。とりあえず今日覚えた人の名前と立向居の状態と、晩御飯のことについて打ちこんで送信。筑紫がサイレントかどうかは知らないけど、いつもメール欲しがるんだからいつ送ってもいいでしょこれ。

パタリと携帯を閉じて、寝転がる。毛布持ってきてよかったなー、なんて思っていると誰かがキャラバンから出てきた。
下を覗き込むと、パチリと目が合った。…あ、吹雪くんだ。
彼は一瞬気まずそうに目を泳がすと、遠慮がちにこちらへ来てもいいかと聞いてきたので、いいよーと返事をした。

「ごめんね」
「キャラバンの上はみんなの場所だから、謝る必要はないよ」
「あはは…うん、そうだね」

吹雪は潤の隣にちょこんと座った。色白いなーなんてぼーっと見ていると、吹雪はこちらを向いて困ったように笑う。あ、ほぼ初対面なのに怪しいよね。ごめんごめん。

「えーっと、吹雪くんだっけ?」
「うん、吹雪士郎。よろしくね?君のことは…なんて呼んだらいい?」
「何でもいいよ」
「じゃあ潤さん、でいいかな」
「いいよ」
「…潤さん」
「何?」
「救急車を呼んでくれたのが…潤さんって聞いて、お礼が言いたくて…。ありがとう」
「困ってる時はお互い様だよ」
「…うん、ありがとう」

柔らかく笑う吹雪。大人しそうな子…ボールに突っ込んでいったなんて信じられな…いや、大人しいのとボールに突っ込んでいくのは関係ないか。特殊な問題、ね。よく分からないけど、またボールに突っ込んでいくような無茶だけはさせないようにしないとね。
すると、潤は吹雪の視線が自分の手元にあるパンに集中していたことに気づいた。

「ん?お腹空いたの?」
「あ…」
「食べる?まだたくさんあるからいいよ」
「ホント?」
「はい。好きなの取っていいよ」
「ありがとう」

吹雪は潤からパンやおにぎり、ジュースが入った袋を受け取りカレーパンを引っ張り出した。

「これ、食べていい?」
「いいよ。ジュースも取っていいよー。カレーパンだけだと喉渇くでしょ」
「ありがとう。じゃありんごジュース貰うね」
「どうぞどうぞー」

袋を開けて、吹雪はカレーパンを一口かじる。すると辺りにカレーの匂いが広がった。
美味しそうにパンを食べる吹雪。お腹が空いてたら力も出ないからね。たらふく食べたまえ青少年よ。おかわりもあるぞよ。

「ふふっ、美味しいなぁ」
「それはよかった。吹雪は晩ごはん何食べた?」
「僕?僕はコロッケを買って食べたよ」
「それだけ?」
「うん。…だから多分お腹が空いたんだよ。潤さんも少ししか食べなかったの?」
「ハンバーガー3つとポテトとジュース、ナゲット食べたはずなんだけどこの通り夜中にお腹が減ってさー」
「たくさん食べるんだね」
「早く、たくさん食べないと他の子に奪われちゃうんだもん。夜中はお菓子食べちゃ駄目だ…し?」
「…?どうしたの、潤さん?」

他の子に…奪われる?他の子って、誰?そりゃあ、夜中にお菓子食べたら兄さんに怒られるけど、でも…。首を傾げていると、吹雪に肩を揺すられ、大丈夫?と聞かれる。

「ごめん大丈夫。なんか食べ過ぎたみたい、あはは」
「ほどほどにしないとね」
「気をつけます」

夜中だから頭がしっかり働いていないのかも。そう納得して、ジュースを啜ると、またキャラバンが開く音がした。吹雪と一緒に下を覗くと、男の子がいた。「壁山くん?」隣の吹雪が声をかけると、壁山くんはこちらを向いた。

「吹雪さんに…本田さん?」
「…眠れないの?」
「いや、カレーの匂いがしたんで…腹減って…」
「僕のカレーパンだね」
「壁山だっけ。お腹空いたの?」
「はいッス…」
「じゃあ上がっておいでよ。パン食え、パン」
「いいんスか?」
「うん」

手招くと壁山くんがこちらへやってきた。潤は隣に座るのを確認してパンなどが入った袋を壁山に渡した。

「好きなの食べていいよ。ジュースも飲んでいいからね」
「ホントっスか?じゃあ…クリームパンといちごミルク貰うッス!」

口調からして一年生なのかな、壁山。立向居と仲良くしてくれると嬉しいなぁ。

「壁山は一年?」
「そうッスよ」
「そっかー。立向居と仲良くしてあげてね?」
「はいッス!」
「なんだか潤さんって、立向居くんのお姉さんみたいだね」
「そうかな?」
「今日の質問大会、すごかったっスよね」
「立向居くん、潤さんのこと何でも知ってたね」
「あはは、あれには私もビックリしたよー」

なんて、3人でしばらく雑談をしていたらかなり遅い時間になったようで。壁山の頭がこくりこくりとゆれ始めた。風邪をひいたらマズいので、今日はここでお開きすることになった。



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