「潤はお兄ちゃんのこと好き?」
「お兄ちゃんのこと好きだよ!」
「…ぼくにはお兄ちゃん、いたのかな」
「いたかもしれないね」
「そっかあ…、ぼくも家族がほしいな」
「--、私たちは家族だよ。お兄ちゃんだってそう思ってるよ」
「ぼくあまり潤のお兄ちゃんと話したことがないんだけど。でも…そう言ってくれてありがとう」
「いいえー」

暖かい光の差す場所にいた。今より小さな潤の手。繋がれたその先にいる子の顔は見えなかった。けれど、なんだか懐かしい。
あれ、それよりこれは何歳の時の話?お兄ちゃんって、兄さんのことだよね。これはいつの話?この子は誰?遠くから子供達の遊んでいる声がする。ここは何処?「本田さん」

急に視界がハッキリした。あぁ、なるほど。さっきのは夢か。なんて一人で納得していると、茶髪の子と銀髪の子が覗き込んでいた。

「おはよう。パーキングエリアに着いたよ」
「パーキングエリア?」
「そうそう、夜ご飯を各自で食べることになったからさ。はい、これお金」

銀髪の子に握らされたのは1000円札。え、こんなに?と思っていると、立向居と本田さんの分だよって言われた。成る程。
隣で自分と同じように眠っている立向居を揺すると「ううー」と唸った。多分放っておいたら起きるだろう。
というか、自分はいつの間に寝たんだ。キャラバンの窓から外を覗くと、夕焼け空だった。いやいや、出発したの朝だよね。車内を見回すと、自分たち四人以外誰もいなかった。もしかしなくても、この二人は自分たちをずっと待っててくれたのか。

「起こしてくれてありがとう。ていうかさん付けしなくていいよ」
「そう?じゃあ潤で。あ、改めまして一之瀬一哉です。よろしくね?」
「土門飛鳥だ、よろしくな」
「よろしくー」

いやあ、再び自己紹介してくれるなんてありがたいなぁと思っていると、立向居が起きた。

「…え、夜?」
「夜夜。ビックリした?」
「驚きました…、俺いつの間に寝ちゃったんだろう…」
「さて、立向居も起きたことだし飯食いに行くか」
「待たせちゃってごめんね?」
「別にいいよ、せっかくだから4人で一緒に食べに行かない?」

一之瀬に誘われてもちろん、と頷く。まだ眠いらしい立向居を引っ張ってキャラバンを降りる。ドライバーの古株さん(名前は土門に聞いた)が運転席でパンを食べていたので、挨拶した。ドライバーの人ってすごいよなー。長時間同じ体勢で、それに周りに注意しながら運転しないといけないし。気を張りっぱなし。今度肩揉ませてもらおう。古株さんありがたや。ありがたや。車通りの多い駐車場を注意しながら進んで、野外のベンチコーナーまでやってくると他のメンバーがちらほらいた。「やっと起きたか」鬼道がニヤリと笑いながら言う。すみません。
そこを通り過ぎて店に入ると、結構人がいた。先頭を歩いていた一之瀬が先へ進むのを止め、潤たちを振り返った。

「何食べる?」
「私は何でも」
「何でもが一番困るよ潤」
「すまんすまん。じゃあパンとかおにぎり以外」
「がっつり食べたいって事だな」
「そういうことだね。立向居は?」
「俺は潤先輩と同じもので大丈夫です!」
「自分の食べたいものでいいのよ」
「え、じゃあラーメンで」
「俺もラーメンが食べたい。塩がいい」
「ラーメンは豚骨ですよ!」
「いや、塩」
「立向居と土門、何で喧嘩してんの。あ、俺はハンバーガー食べたい。ということでフードコートで決定ー」

辿り着いたフードコートは大変混雑していた。結構広いパーキングエリアなのか、フードコートも広くて他の雷門の人がいるのかどうか分からなかった。
食べれる物だったらなんでも良かったので、土門と立向居がラーメンなら一之瀬のマクド○ルドの方へ着いていこうと思った。2人2人で行動するほうが、後で合流するのに困らなそうだし。

「先輩ハンバーガー食べるんですか?」
「うん。じゃあ二人とも、また後で。待ち合わせはここでいい?」
「あぁ、分かった」
「行こうか潤」
「うい」

一之瀬と共にマクド○ルドの列に並ぶ。他の所より列は短かった。ラッキー。さすがファーストフード。

「潤は何バーガーにする?」
「チーズでポテトはLでドリンクはオレンジジュースのL。あとはナゲットかな」
「食べるね」
「食べるよ。一之瀬は?」
「俺は…トウガラシのやつのセット。ポテトLにコーラのL。あとバニラシェイクも」
「というか、立向居と自分で千円だったのに、立向居違うトコに行っちゃったよ。どうしよう」
「土門が俺の分との千円持ってるから、潤は俺と半分にすればいいよ」
「あ、そうなんだ。じゃあ二人で一緒に注文しよう」
「というか、千円じゃ足りないよね」
「あはは。幸いサイフは持ってるよ、一之瀬」
「あはは。俺も。じゃあもっと頼めちゃうね」
「頼んじゃう?」
「頼んじゃおうか」

結局先ほど挙げた物以外もたくさん注文して、土門に呆れられた。大丈夫だよ、土門。ちゃんと食べるから。
どうやら一之瀬は(土門もだけど)アメリカに住んでいたことがあるらしくて、日本のバーガーは小さすぎるから何個でもいけるよと言っていた。頼もしい。
二人で全てを完食して、みんなで売店に夜食を買いに行った。ええ、まだまだ食べますよ。それからキャラバンに戻ると、既に皆揃っていて吉良監督に「集合時間はとっくに過ぎてるわ!」と怒られた。集合時間って何、と土門と一之瀬に聞くと、二人の口から乾いた笑いがこぼれた。忘れていたらしい。



20130527
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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