私と炭治郎君は鱗滝さんに鬼殺隊になるための修行をつけてもらった。
炭治郎君は2年間の修行の末に藤襲山の最終選別に合格し鬼殺隊に。鱗滝さんに最終選別の許可を貰えなかった私は、ある程度の護衛術と花を咲かせる力で薬草や藤の花を大量に咲かせ援護するサポート役……隠のような立ち位置で、炭治郎君と禰豆子ちゃんと共に狭霧山を発った。

それからは、目まぐるしく流れるような日々だった。

珠世さんや愈史郎くんと出会い、禰豆子ちゃんが人間に戻る手掛かりを得たり、善逸くんや伊之助くんと鼓の音で部屋が変わる能力を持った鬼、蜘蛛の鬼を退治し、その最中しのぶちゃんや冨岡さんとの再開も果たした。

進むほどに激しさを増す鬼との戦闘に、私は、何度も炭治郎君と禰豆子ちゃんの傍から離れた方がいいのではと考えた事があった。

身体を鍛えたといっても、身を守る逃げるので精一杯だったし、鬼の力に比べたら私は赤子も当然。更に私は、稀血という、鬼が好む特別な血を持っていたらしく、幾度となく狙われた。

咲かせたフジの花での鬼避けや皆が守ってくれたおかげで、今まで死ぬ事はなかったけれど、何度も私を庇って怪我をする皆を見て、無力感と罪悪感で心は崩壊寸前。特に、一番に私を優勢して守ってしまう炭治郎君の身体に、私を庇った傷痕が増えていく度にその想いは強固となり私を雁字搦めにした。


けれど、炭治郎君は悩みもがく私に「迷惑じゃない。守りたいから守っている。離れないで、これからもずっと一緒にいてほしい。サクラさんがいるから、俺は頑張れる」と言った。

ただのうわべだけの慰めの言葉でなく、感情を伴った言葉や真摯な態度、表情から伝わる想いと私を見つめる熱をおびた眼差しが、炭治郎君の本気の言葉(おもい)であると伝えてきた。

炭治郎君の優しさと想いに、言い様のない感情があふれでて涙が止まらなくなった。
嬉しい、ありがとう、大好き、そんな簡単な言葉では言い表せない、もっと、もっと、尊いもの。
涙でぐしゃぐしゃの顔のまま炭治郎君と身を寄せ合い、どんな事があっても離れないでそばにいる。そう、誓いあった。







それからもずっと、炭治郎君と禰豆子ちゃんのそばにいた。
列車と一体化した鬼を退治した時も、小さな任務の時も、遊郭に潜入した時も、刀鍛冶の里へ行った時も、禰豆子ちゃんが太陽を克服した時も、ずっと。


そんな日々の中、私は炭治郎君と想いを通じ合わせた。

いつも傍にいてくれて、私を必死に守ってくれて、私一筋に見つめてくれる姿に、私はいつしか心を動かされていた。

炭治郎君への想いに気付いた頃、炭治郎君に「全てが終わったら、未来に帰らないで、俺と家族になって欲しい」と、告げられた。

今は、禰豆子ちゃんの事、無惨を倒す事、そして未来の事に僅かな未練があり、返事はその場で出来なかったけど、私の心はすでに決まっていたようなものだった。きっとそれは、炭治郎君も匂いで感じ取っていたのだろう。

満たされた心のまま手を取り合い、私達は同じ未来を思い描きながら、希望のように輝く朝日を眺めた。温かく幸せな家庭を気付き、笑い合う未来を。




禰豆子ちゃんを人間に戻したら。
無惨を倒したら。
全てが終わったら。
その時は炭治郎君にちゃんと返事をしよう。「未来に帰らない。これからも大正時代(ここ)で、炭治郎君と二人で、竈門家のようなあたたかい家族を作りたい。私とずっと一緒にいてほしい」と。

……そう思っていた、ある日。《それ》は起こった。


突如として、無惨との全面決戦が始まったのだ。
鬼殺隊を一気に壊滅へと追い込む気なのか鬼殺隊員の9割近くがいきなり戦場へと落とされ、戦いを余儀なくされた。そしてそれは、炭治郎君と義勇さんのそばにいた私も同じだった。


無惨との決戦を一言でいうと、一方的な虐殺、だった。刈り取られる雑草のように、補食された虫のように、人の命が一瞬の内に十、百と消えていく。
しのぶちゃんも、蜜璃ちゃんも、善逸君も伊之助くんも、カナヲちゃんも、柱の方たちも、訓練で切磋琢磨し合った仲間達も皆、殺されてしまった。

数時間前まで笑いあっていた仲間が、人として尊厳の欠片もない肉塊に成り果てている。救いのない地獄でしかなかった。
でも、まだ炭治郎君と禰豆子ちゃんが生きていた。
二人が生きているのなら、私はまだ、地獄の中に光を見出だせていた。



けれど、炭治郎君も禰豆子ちゃんも殺されてしまった。……無惨の攻撃から、私を庇うような形で。



あと少しで無惨を倒せる所だった。日が昇るまであと数十分。皆が命をかけた最後の一撃が積み重なり、死に間際まで追い詰めた無惨と、同じくらいに満身創痍の炭治郎君。

二人の攻撃がぶつかり合い、煙が晴れた時に立っていたのは、炭治郎君だった。

勝った、と思った。だけど、並外れた生命力の無惨は、最後の悪あがきのように、暴れまわるように攻撃を繰り出した。

その内の一つが私を襲った。避けようにも折れた両足と腹部からの出血で動けない。
やられてしまう。そう思った直後、私の心臓を貫くはずだった無惨の攻撃は禰豆子ちゃんの心臓を貫いていた。人間に戻りかけだった禰豆子ちゃんは無惨の一撃に破れ、身体は溶けるように消え着物だけを残して命を散らした。発狂する私に再度襲い掛かった攻撃を庇ったのは、炭治郎君だった。私を庇った炭治郎君は自身の血海の中で、最後まで私を気にかけながら、優しくあたたかった瞳を永遠に閉じてしまう。

呆然と炭治郎君の亡骸にしがみついた私以外に、この場所に意識があるものは、私と無惨だけだった。




そして、私は無惨に殺された。





-3:エンディグ1、介入による弊害が生み出したバットエンド


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