38:240000000分の1×300年

人が人と出会う確率は、天文学的な数字らしくその確率は、海に懐中時計を分解したパーツを投げて、波の力だけで元の懐中時計に組み立てるくらいだという。その中でも親しくなった人と出会える確率はそれ以上に低い確率だ。なら、過去に遡り、炭治郎君や竈門家の皆に出会えた確率はどのくらいなのだろうか。それこそ奇跡といえる出会いなのではと私は思う。





「桜さん、あと2日です」
「んー〜何がぁ〜?」

昨日皆で焼いたおせんべいを音を立てながら食べていると、隣で一緒に食べていた禰豆子ちゃんが思い出したように口を開いた。机に顔を乗せだらしない恰好で食べているが許してほしい。皆で炭焼きの釜を掃除した後だったのでくたくたに疲れており、もう体力は1%も残っていないのだ。疲れから、つい気の抜けた返事を返してしまう。




「お兄ちゃんの誕生日まで」
「もっと早く教えてほしかったな!!!」

机をバンと叩き急いで立ち上がる。ぽかん、とした禰豆子ちゃんを横目に、こうしちゃいられないと、脳内に瞬時に組み立てられた計画を実行に移すべく、さっそく行動を始めた。









何をするにもまずはお金だよねと、疲れた身体に鞭をうち、保管しておいた様々な種をかき集め徹夜で花を咲かせた。
籠に詰めた花は予想以上に重く、自身の鈍足と体力で普段通りに出発していては時間が足りなくなってしまうと考え、日が昇る直前に山を下る事にした。
寝ている皆を起こさないように、枕元に置手紙を残して竈門家を後にする。

初めて一人で山を下りるので少し緊張はしたけど、通い慣れた山道を迷うことなくスムーズに下山する事ができた。最初の頃は休憩しながら四時間はかかっていた道のりも、体力が少しついた今は三時間ちょっとで来れるようになっていた。
町についてすぐに、観賞用と薬草の両面で売り、普段より少しだけ多く稼げたお金で、プレゼントの材料と食材を買う。プレゼントは家で作成すると、炭治郎君に見つかってしまう可能性があるので、町の入り口辺りで座り作成開始。




「あー、遅くなっちゃった…」

一度完成したプレゼントを見つめ直して、さすがにこれを渡して引かれたら、二度と立ち直れなくなりそうだと思って、もう一度一から作成しなおしたせいで、日は沈みかけ、東の空には、うっすらと星空が見え始めている。
置き手紙には昼過ぎには戻ると書いたので、皆心配しているかもしれない。籠を背負い直し、慌てて帰路を急いだ。








「う……どうしよう。ちょっと気持ち悪くなってきちゃった……」

口元に手を当て前屈みになりながらも、少しでも歩みを進めようと頑張るが、気持ち悪さから何度も立ち止まってしまう。昼頃から体調の変化には気付いていたけど、気のせい気のせいと誤魔化し続けた仇が、今になって表層へと浮かび上がってきた。
寝不足と前日の大掃除や花を沢山咲かせた疲れが取りきれておらず、更に山での移動、花売りでの労働が一度に追い撃ちをかけ、体力を根こそぎ奪ったのだろう。

けれどと、一歩、また一歩と歩き出す。
あと少しで竈門家のご近所さん、三郎さんのご自宅がある。家族を亡くし一人で雲取山の麓に住む方で、何度か泊めてもらった事があると炭治郎君達から話を聞いたことがある。私も三郎さんと2〜3回お話をしたことがあるけど、怖い顔付きとぶっきらぼうな口調のわりに、親切な方だったと記憶している。

「三郎さんのご自宅で、少しだけ休憩させてもらおう…」

三郎さんの家まで、目と鼻の先という所で、貧血気味になり、近くの木に凭れ掛かる様に座り込む。その際、腕に僅な痛みが走った気がしたけれど、気にせず呼吸を整え、目を瞑る。
ちょっと休むだけ。寝はしない。少し座っていれば楽になるから、目を閉じるだけ。3分くらいしたら、三郎さんの所に行こう。

そう強く自分に言い聞かせたのに、強烈に襲ってきた眠気に負け、気絶するように意識を失った。








※大正コソコソ噂話※
今回の話のタイトルの数字を数えても何もないよ〜!(´・∀・`)ふふ


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