34:経過観察

《皆の花畑》とかかれた花壇にある、私が咲かせたスズラン。もう少しで一月以上経つが、今だに白い花が可愛らしく風に揺れている。
なんだか長生きだな〜…、竈門家(ここ)の空気が澄んでるからかな☆、なんて冗談みたいに思っていたら。





「おーいたいた!」

お揃いの三つ編みカチューシャをした禰豆子ちゃんと隣町に買い物に来ていると、北路(ほくろ)さんに声をかけられた。

「嬢ちゃんあの花どうやって育てたんだ?」

唐突な質問に首を傾げながらも、正直に話す事も出来ないので無難に答える。

「えーー…と、愛情込めて育てました!けど、急にどうしたんですか?」
「あの花、鈴蘭っていうんだっけか?まだ咲いてるんだよ!」
「え?」

植木ならまだしも、この時代の切り花ってそんなに長生きするものだっけ?と禰豆子ちゃんを見れば、禰豆子ちゃんは私の伝えたい事が分かったのか、驚き気味に首を左右に振る。
その場は企業秘密ですとかなんとかいって誤魔化して「女房が違う花が欲しいっていうからよ、次来たら教えてくれ」と言って帰った北路さんが見えなくなったところで、禰豆子ちゃんに話しかける。

「切り花ってどれくらい持つの?」
「花にもよりますけど、長くても十日ですね。……もしかして枯れないんですかね?」
「うーん、どうだろう?」

こればかりは、時間を追って観察してみないとわからない。それに、

「枯れない花ってのも素敵だけど、ちょっと困るな…」
「そうですね…」

枯れない花をうたい、全国を周れば《最初が》大量に売れて沢山のお金が入ってくるかもしれない。お金は欲しい。けど、私はそういったことがしたいわけじゃない。それに、枯れない花があると、普通のお花を買わなくなってしまって、他のお花屋さんに迷惑をかけてしまうかもしれない。

ちらりと禰豆子ちゃんを見る。
それに、私は恩返しが終わったら、未来に帰るつもりだし…。過去であまり目立ちすぎた行動をとるのも良くないと思うから…。


「桜さん?どうしました?」
「ううん、なんでもないよ」

まぁ、また考えよう。ひとまず経過観察して花がどうなるのか、それ次第だ。

「禰豆子ちゃん、あとは買うのはお薬だけだっけ?」
「はい、嵯峨山さんから紫蘭の……、傷薬を………」

突然ピタリと止まった禰豆子ちゃん。かと思えば閃いたとばかりに、両手をポンと叩く。

「桜さんそれですよ!!」

それ?


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