28:竈門家家族会議in桜

竈門家in私は、居間の真ん中に置いた一房のスズランを囲うように円になり座った。
誰も話さない動かない静けさの中、炭治郎君はゆっくりとした動作でスズランを手に取った。皆が炭治郎君の一挙一動を目で追い言葉をじっと待つ。炭治郎君は仰々しい仕草と表情で匂いを嗅いでからスズランを床に置き、皆を見渡して一言。

「すずらんの匂いと、桜さんの匂いがする」

「桜ねーちゃんは、花咲かばばあだった…と」
「ばばあじゃなくて、せめておねえさんにして下さい」

神妙に呟く竹雄くんにすぐさま突っ込みを返す。


「でも、本当に私なのかな…?もしかしたら禰豆子ちゃんかもよ?」

私、炭治郎君、禰豆子ちゃんが目撃しているし、科学的にも自然現象でないのは、分かるんだけども。その場にいた、禰豆子ちゃんの可能性もあるわけで…。

「お姉ちゃんは未来人じゃないから違うよ」
「茂くん。未来人だからといって、出来るわけじゃないからね?」
「桜おねえちゃんは、おにいちゃんのお鼻をうたがうの?」
「ごめんなさい」

最近、さ行が喋れるようになった六太くんの純粋な疑問が、怒りのように聞こえてすぐさま謝罪する。

「急に花が咲くなんて不思議ねぇ…」

頭突きで猪撃退しちゃうとんでも技を持つ葵枝さんが言うと腑に落ちない気もするが、確かに摩訶不思議、奇々怪々だ。

「まあ、未来から過去に遡ったって事以上に不思議な事もないけどねぇー」

花子さん、ごもっともでございます。

「試しにやってみます?」

禰豆子ちゃんは、花壇に入りきらず少しだけ残っていたスズランの種を一つ渡してきた。
私じゃないと思うんだけど、まあ物は試しだよね。と、興味津々の7つの視線を感じながら、種を手に取り、ごほんと咳を一つ。

「では。……さ、さぺ、咲けっ!」



数十秒じっと見守っていたけれど、種に変化はない。
それに、なんだろう…。純粋無垢な人達の前で、一人真剣に魔法ごっこしてるみたいで、妙に恥ずかしくてかんでしまった…。

「気合いが足りないんじゃないか?」

竹雄君が、私の羞恥心を見破りジト目で次を促す。まだキラキラ輝く瞳を向ける皆を裏切らないように、恥ずかしいのを我慢して力を込める。

「さ、咲けぇーーー!!!」

気合いを込めすぎた魂の叫びとは正反対に、種はピクリとも動かず咲く気配はゼロ。
恥ずかしさで顔を覆う暇もなく、禰豆子ちゃんが可愛らしく応援ポーズをとる。

「愛を込めて!」
「咲けぇえ!」


咲かない。花子ちゃんも片腕をつきあ上げ、ノリノリで要求してくる。

「楽しげに!」
「咲け☆」


咲かない。葵枝さんがおっとりと言う。

「メガネ紳士風に」
「咲きたまえ!」

待って。ねぇ、もしかして貴女達面白がってませんか?
目で訴えれば、禰豆子ちゃんと花子ちゃんは、てへぺろ頭コツン☆をした。可愛いけどだめだよ、それ古いよ。
と思ったけど、大正時代の彼女達からしたら、むしろ最先端だった。流行を100年程先走っている。



「何か条件があるんじゃ…?あの時、なにを考えてました?」

ふざけている間もずっと真剣に考えてくれてたのか、炭治郎君がすごくまともな助言をくれる。
それに応えるように、つい先程の事をゆっくりと思い出す。

「うーん…あの時は……。禰豆子ちゃんが巾着をくれたのが、すごく嬉しくて…」

懐に入れた巾着を片手で取り出してじっと見つめる。

私が竈門家で初めて目を覚ました時、お互いの幸せが幸せって感じが温かくて素敵で羨ましいなって思った。その空間に、少しでも入れてもらえたような、ここに居てもいいよって認められたような気がして、


「幸せだなって思ったの」


自然に笑みがこぼれた。
直後。手の平の種がほんわりと温かくなった。
種は柔らかな白い光を纏い芽を生む。芽はゆっくりと成長し茎になり、ポンポンっと白い可愛らしい花を咲かせた。時間にして数秒。光が完全に消えた頃には、私の手元に一房のスズランが嬉しそうに咲いていた。







※大正コソコソ噂話※
夢主が能力を使ったのは25話以外に、6話と22話(花増えてる)です。気付きましたかね?


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