24:おふざけ

炭治郎君と初めて町に下りてから数週間後、四季は完全に春へと移り変わっていた。


けれど今だに炭売りと同時進行での就活は継続中……。北路さんが紹介してくれて単発の仕事、――犬の散歩、子守り、簡単な内職等――はいくつか紹介してくれたものの、安定して長期で働ける仕事は見つからない。
若い人が都会に出てしまった分、人手不足になると思いきや、その分人口も減っているから、働き口は変わらないのだとか。

簡単だと思った就活が上手くいかず焦りの気持ちも出てきた。まるで、周りの皆が就職先が決まっていく中、自分だけ決まらない大学四年生の十一月頃といった気分だ(経験したことないけど)。……世知辛い。
それでも単発の仕事で得たお金は竈門家に全額返済している。押し問答はあったものの、ちゃんと受け取ってはもらえているが、私にかかった治療費にはまだほど遠い。



それと町に下りる際は、必ず炭治郎君と花子ちゃんの二人の同行が必須となった。
なぜこの二人なのか。それは、竹雄くんに私に熱い視線を送った男性の事を、雑談の中でポロっと話した事が原因である。話は竹雄くんから六太くん、葵枝さん、禰豆子ちゃん、茂くん、花子ちゃんの順に伝わり、伝わっていく途中、誤った解釈と過剰表現が話を曲解させ、なぜか

「私に猛烈な好意を抱く間座紺(まざこん)さん42歳が、モンペな母親とダックを組み、すぐにでも嫁入りさせるために、夜道一人で歩く私に睡眠薬を染み込ませたハンカチを嗅がせ動けなくなった所を強引に拉致。誰も入れない邪魔させられない特別な空間で、母親監視のもと、愛を囁き語り惚れさせ、モノにする。子供は三人。という計画をたてている」

という、とんでも設定に変形していた。原型どこいった。

おそらくこの話を過剰に盛り歪めたのは、竹雄くんの独り言を聞いた六太くんが自分の知る単語を精一杯駆使して母親に報告。幼児の話の受け取りと伝える力は未熟かつ未知。ここで大分変質した話を、天然なのかワザとなのか、最近昼ドラと火サスにはまり始めた葵枝さんが脚色し禰豆子ちゃんに伝える。禰豆子ちゃんはこれを面白がり誇張させて、茂くんに話す。驚いた茂くんが「これは大変だ」と花子ちゃんに大げさに報告し、なぜか私をすごく慕ってくれる花子ちゃんが、過剰反応し事を盛大に荒げた。悪い例の伝言ゲームだ。


花子ちゃんは、「私が桜お姉ちゃんを守る!」と可愛らしい顔に殺気を含ませシャドーボクシングを披露し、護衛役だと意気込む。炭治郎君は男性の匂いが近くに来ないか警戒する役なのだとか。いや、炭治郎君、きみこないだ一緒に居たよね?この話誤解だって、分かってるはずだよね?「任せろ!」と弟妹達に決意表明して拍手喝采浴びて得意顔してる場合じゃないよ?まるで真実の様に語る葵枝さんに影響されて、記憶改竄でもされたの?催眠にでもかかったの?うん、すごくかかりやすそうではあるね。

さすがに訂正しようかとも思ったけど、お祭りのように盛り上がる皆と禰豆子ちゃんが声を出して楽しそうに笑っているのを見て、皆がイベントのように楽しんでいるなら、誤解したままでもいいか。なんて他人のためと思わせておきながら、竈門家の皆に心配されて嬉しかったって気持ちの方が強かったのかもしれない。



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