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「その名残というかその暖かい環境を忘れさせない為に。
今でも口調やらなんやらをそのままにしてるってわけ。
そりゃあ、双子の影響をうけて精神的に沈んでも。
この僕がそのぐらいであんなになるわけがないだろ。
だいたいそういう影響ってもそんなに受けるものでもないし」
「そのせいで一杯、斎は傷ついた。
それに精神的にも傷をたくさんおった。
なのに私はそれでも何もできなくて。
斎はいきなりあんな状態な所に放り込んで辛いわけなのに」
「だーかーら!それは僕が勝手にやってだけで」
「だから、もうしなくてもいいって事。
斎からもらった斎の暖かい所の記憶じゃなくても私はもう大丈夫だから。
私は私の暖かい所、あるから」
キングの事か。
あぁ、かわいいかわいい祭をこんなにも強くさせるなんて。
キングの姿を見て、前の向き方とか。
自信の持ち方とか。
そういうのを学べばいいかなって思って預けただけなのに影響受け過ぎだよ。
……でも、良い傾向なんだろうな。
あーあ、にしてもなんでキングなんだろうね。
一時預かりが永久預かりになったじゃないか。
「オーケー。
解った。
祭がそうしたいなら僕が断る理由がないんだからね。
おっと、こうは駄目だったんだ。
久しぶりの素だから慣れないな……。
私が断る必要はないものね」
あぁ、慣れない。
あの口調で何年もすごしたから。
「うん、そっちの方がしっくりくるな」
「どういう事をいいたいの、神の子は」
「あれ、そこは変わらないんだ」
「うん、そう」
そこまでは流石にね。
「ほら、今までの口調はなんだか演技かかってたから。
あえてそうしてた部分もあったから、たいして気にならなかったんだけどやっぱりね」
「相変わらず、凄い観察眼だよ。
気をつけてたのに」
「僕の演技は斎がみっちりだったからね。
一応完璧だったと思うんだけど、どうかな?」
「まぁ、悪くは無かったと思うけどやっぱり変なきがするな」
「あははは。
けどあの口調、存外話しやすかったけどね。
それでも祭がそうしたいと言うなら元に戻すのも悪くないと思うよ。
それに、ほら。
性格は変わらないわけだし?
そこまでは今は偽ってないのだから私のテンションは変わらない!!
あ、でも事でしばらくは口調が混ざっちゃう時はあると思う。
けれどどうぞおつきあいお願いしたいな。
そうそう、祭は気づいてなかったけれどお母さんは私達の入れ替わりには気づいていたみたい。
特に何か言われたわけじゃないんだけれど。
やっぱり産みの親っていうのはわかるんだね」
あ、けれど物凄く口調が違うってわけじゃないから。
ちょっと雰囲気が柔らかくなるぐらいみたい。
男の子の口調だったら解りやすくて良かったのにね。
「思わぬ所も元に戻ったわけだけれど。
新生斎ちゃんをよ・ろ・し・く!!」
ウィンクを決めて笑ってみせた。
僕の役目も終わったわけだし。
そろそろ気の効いた私は舞台から降りよう。
なに、だからと言っても呼ばれればいつでもどこでも私は舞台に上がってきて楽しむ気はあるけどね。
そんじゃ、また。
機会があったら、また会いましょう。
えんどってね!!
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