42
僕から言わせてもらえばの話……。
僕が仮に、仮の話ほど虚しい話はないけれど。
まぁ、仮な話。
僕が椎名さんの立場であったなら。
異常なまでな怪我しやすい質であったなら。
それをまず始めに説明すべきだ。
このような事態になったなら転びやすい所にはまずいかないし久遠さんには一切合切近づかない。
椎名さんは久遠さんに憧れているみたいだけれどだったならば。
だからこそ君は久遠さんに近づくのはやめたほうがいいと思うのだろうけれど。
スー君やエース君がぎゃあぎゃあ言う事を聞きながらそう思ってみたり。
もっとも僕は常識をわきまえているので言いはしないけれど。
「うるさいぞ、赤也!」
「副部長は、先輩が怪我してなんとも思わないんスか!?」
「そうは言っていない」
「赤也はもっと冷静になる事を覚えろ」
参謀がたしなめに入る。
一方、椎名さんはおろおろとしていて。
詐欺師君とかは興味無さげに他の話をしているのだけれど。
まったくもって、ばらばらだな。
はぁ……。
「所でさ、所で。
その原因の久遠さんを僕は最近見かけないのだけれど」
正確には避けていたという。
「いったい、久遠さんは今何をしているのかな?」
「久遠さんはここ数日、休みなり」
「ん?それは初耳だな。
一体全体どうしたのかな?
もしかしてこのイジメのせいで学校にこれなくなったとか、そんな事は言わないでいね」
というか報告どうした報告。
そう言う意をこめて詐欺師君を見たら、俺もつい最近しったしのぉ。
なんて言ってきた。白々しい。
興味がないのはわかるけれどしかしだからといって飽きて報告を怠るのはやめて欲しいものだ。
まぁ他意はないだろう、この場合。
「久遠は風邪だ」
「そうか、ありがとう皇帝よ!
君は常識的でたすかる。
ん?何、その視線。
皇帝は十分常識をわきまえているじゃないか。
確かに少々考えが古風で融通が効かない人ではある。
だからと言ってそれで常識があるかないかとか。
それだけで図ってはいけないよ。
しかし風邪か、僕にはとんと縁の無い言葉だ。
風邪とかは僕は引かないんだよ。
そこあたりの衛生管理はメイドさん達がプロフェッショナルなクオリティーで守っているのでね。
僕の口にする物も、いちいち栄養士の人が計算して作ってるしね。
霞ヶ丘とはいえそこまでやるかって言うのが
個人的見解ではあるけれど、まぁ仕方あるまい。
金がある以上使いたくなるのは当然な心理なのだろうからさ。
それでは、風邪を引いているというのならば
お見舞いにいかないとね。
当然だろう?
同じ学年の仲間が病気に苦しんでいるんだ!
放置するなんてそんな人でなしな行動僕にはとてもとてもできないよ!
……なーんてね。
そろそろ僕の虚言もおいおい、ってそう思われるようになってきたので、本音はさ。
ぶっちゃけると、久遠さんの家に行ってみたいんだよね。
何か、良い手がかりを手に入るかもしれないし。
って事で一緒にお見舞いに行く人挙手!!
はい、神の子に参謀、紳士、皇帝……おや?詐欺師も行くのかい?
このメンバーが揃ったら君も行きたくなったのだろうね。
はは、可愛らしいじゃないか。
そんじゃあ、彼女のお見舞いに行こうじゃないか!
彼女のお見舞いは次話で!!」
なんてね。
次話ってなんだよ。
小説でもあるまいし。
前次
戻る