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「寝起きの神の子っていうのもなかなか新鮮でいいね!
こう見ているとまだまだあどけない子供だと思わせられるよ。
僕も同い年なのにって言葉は無視させてもらおう。
日課の庭のガーデニングは僕もつきあわせてもらっても?
ありがとう。
あ、おはようございます。
良い朝ですね!!
ふふふふ、神の子……ご両親の前でこう言うのもあれか。
精市君はやっぱりお母さん似なんだね。
それに妹さんもとっても可愛らしい。
ぜひぜひお嫁さんに欲しいな。
冗談だって。
そう反応しないでくれよ。
可愛い妹さんだなぁ、全く」
僕の機嫌はもうマックスだよ!!
神の子の両親はいい人だし、妹は可愛い。
なにより神の子と同じく空間で過ごせるって事が何よりも幸せな事だよね。
「斎は朝から元気だよね。
ほら、朝食作るから手伝ってよ」
「了解!
僕が腕によりをかけて作らせてもらうよ。
これでも四つ星シェフに教えを請うていた時期があるんだ。
だからそれなりに自信はあるから、ね。
僕はお嬢様だから料理はできないなんて王道じみた展開は嫌だからさ。
いつだって斜め上にかっとぶ性格でありたい」
「どんな性格だよ。
それに斎は十分かっ飛んでるから安心しなよ」
「神の子に褒められた!嬉しいな!
嬉しいな、嬉しいな、嬉しいなぁ〜〜」
「褒めてないからね」
「ふふ、精市も面白い子を彼女にしたわね」
「やめてよ母さん……。飽きはしないけどさ」
いいよね、こういうあったかい家族関係って。
別に僕が今の家族は嫌いじゃないけれどさ。
やっぱり共にいられる時間は少ないし。
甘える事を覚える前に僕が大人になっちゃったからね。
時々、思わなくもない。
僕が霞ヶ丘に産まれなかったらって。
けれどまぁ、考えた所でしかたないしね。
事実はどうあっても変えられないし。
それに僕は結局の所、どんな所に産まれても
違う道のりをたどるだけで結局は同じ事になると思う。
僕が僕である以上は。
「歩く混沌」の名の元に僕はきっと一生変わられない。
それでも救いが、神の子や祭達がいるだけでこの世界も悪くないとは思うんだよね。
ふふ、この世界には嫌な事は多いけれど存外悪くはないよね。
だから僕は精一杯楽しまなければみんなに悪いと言うものだ。
なかなか上手くできたサンドィッチを頬張りながらこうやって食卓を囲むのもなかなか悪くない。
「斎、なんか楽しそうだね」
「そうかい?
僕はいつでも楽しいけれど君がそういうのならばきっとそうなのだろうね。
ふふふ、君と結婚でもすれば毎日こんな生活が送れるのかも。
あ、でも精市君が婿に来るんだっけ?
僕が家を継ぐ限り嫁に行くのは、許されないだろうし。
景吾君の方は関係が欲しかっただけの婚約だからお互い、家を出たりはしないだろうし。
けど精市君はそういう華やかな場より素朴な場所にいる方が性に合うのでいのかな?」
「温室があれば俺は十分だけどね」
「そう?
ま、霞ヶ丘の財力があればたいていの願いは叶うよ。
ただご両親や妹さんには色々と迷惑はかかるかも。
霞ヶ丘の名前は伊達じゃないし」
「別にいいのよ。精市の好きにすればいいし。ね?」
「精市も子供じゃないしな」
「斎さんがお姉さんっていうのもいいしね」
本当、愛されてるなぁ、神の子は。
神の子の家は穏やかで好きだな。
最初はこういう家は全部滅んでしまえってそう思ってた時期が懐かしいや。
うん、僕も成長したんだな。
食べ終わった食器を片付けて僕は精市君と庭に出た。
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