38


後ろから、神の子が僕を抱きかかえる。
所謂、お姫様抱っこの形にね。
いつの間に来たんだろうか。
相変わらず驚愕な運動神経だ。
僕にはとてもじゃないけれどできないね。
引きこもりだから。
煙が晴れたと同時に降ろされて僕らは会場の入り口にたった。
さて一芝居。

「何故、来たのです!」
「折角気持ちが通じ合ったのに別れるのは嫌だ。
 俺と共に来てくれ。
 家も、名誉も全て捨てて。
 その変わり俺は君に一生分の愛を君に与えるから。
 何があっても君を愛し続けるから、斎」

そっと周りを見る。
静まる会場。
キングは厳しい顔で僕を見ている。
なかなか良い演技じゃないか。

「お父様……。
 そして、景吾様。
 すいません!私は、この方について行きます!」

神の子に抱きついく。
抱きついた僕の体を神の子が支えて再び同じ体制で会場から逃げ出す。
遠くから、狸の捕まえろと言う声がした。
近づいてくるボディーガードの皆様をのしながら、外に向かう。
どうでもいいけど皇帝はいいとして参謀が妙に木刀の構えが様になってるなぁ。
確か、彼は剣道はやってないはずなのに。
というか紳士よ。武器が定規って……!!
神の子達の運動神経がいいにしても相手もプロ。
追いつめられそうになた時、急にあたりが暗くなった。
停電だ。

「霞ヶ丘、停電なんて聞いてないぞ!」
「いいから、走って!!
 どんな地形かは僕があらかじめ教えたでしょ!
 思い出して!」

会場内の地図なら僕がすでに渡してある。
神の子達なら問題ない。
そのまま、僕らは外に出た。

「いやー!大成功だね!!
 お姫様の救出!なんて、なんとロマンチックなんだろう!
 しかもマスコミの前でだから狸達も誤摩化しようがないからね。
 僕が大人しくこの婚約を受け入れるわけがないと狸どもは前々から策を練ってたけれど僕には筒抜けさ。
 僕には中島がいるからね。
 そもそも中島は狸達がよこしてきた僕の監視役だったんだけれどさ。
 中島は今や僕の駒なんだよね。
 だから、狸達の行動はばればれさ。
 今回僕がこんな古典的な方法を取ったのはね。
 狸達も僕の能力をある程度は把握しているからさ。
 『歩く混沌』『矛盾包容』『不思議世界』!!
 僕のこの二つ名の由来も知っている。
 そっち方面の警戒していたから、逆に古典的なまさか!と言う方法をとらせて貰ったんだ!!
 僕は基本的に物事の矛盾を、誤摩化す事に長けているけれどこういう使い方もあるんだよ。
 彼らも一つ、学んだね。ただしこれは一回しか使えないけれど。
 これは古典的故に、対策なんて山と作れるからね。
 いや、しかし皆お疲れ様!
 どうもありがとうね。
 君達にマスコミの手は伸びないようにこちらからきちんと対策はしてあるから、安心してくれたまえ。
 なぁに、その内僕も実家に戻ってマスコミ相手に申し開きをするからさ。安心してくれよ」

中島が運転する車の中で僕の今日の仕掛けの説明をする。
紳士、参謀はそういうのはきちんと説明しないと納得しないから。
皇帝は人助けだ言えば一発さ。
詐欺師は僕の案が面白いからのったんだよね。
彼とは本当に相性がいいな。
それぞれの家まで送り届け、僕は神の子の家に到着した。
億ションには戻れないからね。
それにちゃんと神の子の家族にも挨拶すべきだしさ。
神の子が僕を連れて帰った時は本当に驚かれたけれどみんないい人だった。
なんだかんだで受け入れてくれたしね。


戻る
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -