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「……父さんのヘタレ。
 ヘタレヘタレヘタレヘタレヘタレ!!
 なんでなのさ。
 可笑しいだろ。
 僕らはこれで満足で幸せだったのに。
 何もかも円滑に回ってたのにバッカじゃないの!?
 祭が景吾君と結婚する予定なんだからいいじゃないか!
 それとも何!?
 分家に養子に入ったから困るって!?
 祭だって僕の双子で半身。
 ちゃーんと本家の血筋をついでるのに。
 今までほっておいたから根回しできないしあの件もあるから嫌なんだろう、あの連中はさ。
 僕が継いでもらわなければ困るんだろうな。
 けどいくら媚びた所で僕はあいつら嫌いだけど。
 出来る事ならブラックホールにでも放り込みたいよ。
 そして二度と戻って来なくていい。
 僕は怒ってるんだ。
 まったくなんで邪魔をする。
 訴えても勝てるぞ、これ!?
 現代社会で政略結婚で拒否しても、無理だってありえないだろ。
 今は自由恋愛の時代だぞ。
 明治に帰れ!!
 ……まぁ、僕も父さんの顔をたててそれはしないでおいてあげるけどさぁ。
 ほんっと、父さんは何をしてたんだか。
 父さんってかなりやり手だって言われてなかったっけ?」
「ふふ、荒れてるわねー、斎」
「ああ、荒れてよ、荒れてるともさ!!」

ニコニコ笑う母さん。
どんな事でも笑顔を崩さない人だけどこんな時までそれを保たなくてもいいと思う。
母さんは良家のご令嬢だから気性も穏やかだなんだけれどさ。
そんな母さんも好きだよ?
好きだけどさ。
もう少し慌てて欲しいと思うのは僕だけなんだろうか。
僕も良いとこの出なんだけど家出娘だし、引きこもりだからな。
家出したのは祭の事で、あいらが出入りするとこにいたくない!!
と言う事なんだけれどその時は父さんは大慌てだったのに
母さんは変わらなかったよなー。
母は強し?

「それにしても斎が連れて来た恋人。
 えっと、幸村君だったかしら?
 綺麗な子だったわねー。
 ニコニコ笑ってて感じも良かったしね」
「知らぬが仏、かな。
 ああ、いやいや。
 何でもないさ。
 きっと母さんと相性も良いと思うよ。
 幸村精市。
 三年C組の出席番号二十一番でテニス部部長。
 三月五日生まれの魚座。
 血液型はA型だよ。
 身長百七十五pの体重は六十一kg。
 委員会は美化委員会だ。趣味もガーデニングでね。
 彼の家にはいつも綺麗な花が咲いているよ。
 得意科目は数学、英語、美術だ。
 苦手科目は科学だね。ただしテストの点数はいい。
 好きな食べ物は焼き魚。
 色は水色。
 詩集を読むのが好きらしい。
 それから……ゴーダルの映画、ブラームスの「交響曲第四番」が好きらしい。
 座右の銘は「冬の寒きを経ざれば春の暖かきを知らず」
 そう言えば今、ルノワールの画集が欲しいんだってさ。
 今、印象派展がやってるから今度一緒に美術館に行こうと約束しているんだよ」
「よく知ってるわねー」
「まぁね。
 好きな人の事はなんでも知っていたいから質問攻めにした結果かな。
 御陰様で精市君についてならたいていの事は話せるよ」
「あら」

実はいうと最初に会った時は僕の霞ヶ丘の名前によって来た奴かと思って色々調べていたせいもあるんだけど。
これも、また秘密だ。
神の子だって知らない事なんだから。



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