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「や、やめろ!
 そんな事で自殺しようとするなよ!!
 どんだけ扱いにくい性格してるんだお前は!」

いやー、さすがテニス部。
あっというまに僕の事を羽交い締めにしてしまったよ。
いやぁん、セクハラ!
なんてね。
じたばたしていたのはやめてケロッとした顔で

「冗談に決まってるだろ。
 僕もこのぐらいの事で自殺なんかするわけなかろう?
 良い反応をしてくれるじゃないか。
 なんだ、そのため息は。
 アメリカンジョーク、ブラックジョークだよ。
 ん?あれは椎名さんと久遠さんではないか。
 あんな校舎裏で何をしているのかな?
 まさか告白?
 もしかして、百合!?」

ちょっと白々しかったけれど効果覿面。
黒豆君が僕を解放して睨むようにして二人を見つめている。
ちょうど、二人が向き合って何かを話しているようだ。
ジャッカル君は屋上から出るべき動きだのを腕を掴んでとめる。

「放してくれ」
「今、こっからあそこまで走っていったとしてもたどり着く頃には事は終わってると思うよ。
 それならじっくりと観戦しなよ」
「んな悠長な事いってられるか!」
「ジャッカル君。
 君は知らなければいけないんだよ。
 真実をね。
 だから大人しく黙って見てろよ」

僕の雰囲気が変わったからか、体をすくめる彼。
うん、よしこれで十分だろう。
腕を放してへらりと笑みを作る。

「それにここで一部始終見ていれば確かな証拠を得られるんだからさ」
「あ、ああ……」

視線を二人に戻す。
お互い、わけがわからずに困惑している。
でも久遠さんは矜持が高い人だから悪戯でこんな事をされたのがむかついたのだろう。
踵を返して歩き出す。
それを椎名さんがおいかける。
転ぶ――。

それでどこからか現れた男達が久遠さんを責め立てていじめへ。

「……うっわー。久遠さんどんまいだね。
 すごく勘違いされてるよ。
 椎名さんも止めてるみたいだけれど効果ないね。
 残念な事に。
 もしかして、今までもこんな事が多々あったのかもしれない。
 今の所久遠さんの発言を信じる人なんていないのね。
 可哀想に。
 あれ、どうしたのかい?黒豆君。
 そんな険しい顔をしちゃって。
 君の所の副部長みたいになっちゃうぞー」
「なんでもねぇよ。
 俺、用事を思い出したから戻るぜ。
 俺の事を呼出した奴が来たら謝っておいてくれないか」
「いいよ」
「悪いな」

きちんと呼び出しをした誰かさんへのフォローを頼むあたり律儀だよね。
ま、呼出したのは僕だからそれは意味ないんだけど。
ハハ、やっぱり苦労人だね。
黒豆君が屋上からさっていったのを見送ってから、もう一度椎名さんと久遠さんに視線を戻す。
すでに誰もいなく、静寂が戻ってきていて。
あんな事がおきた事あんて想像もできない。
とりあえずこれで黒豆君が動き出すから
なんあらかの動きがあるだろう。
スー君とエース君も冷静に事を対処してくれるといいけれどね。


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