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皇帝がこっち側に来た事で。
均衡が崩れる事はある程度は予想していた事だ。
けれど皇帝は元々、中立の立場にいたのだ。
それに僕らもどちらかと言えば中立みたいな立場でもあったし、そんなに問題はないと思っていたのだけれど。

「甘かったか。僕とした事が読みが甘かったな……」

皇帝とスー君達が喧嘩したらしい。
もっともスー君達が一方的に噛み付いて鉄拳制裁になったらしい。
皇帝は真っ直ぐな男だからな。
言わないで欲しいと口止めはしていたからそれは守られていた事が唯一の救いと言えるべき点だろうか。

紳士から来た几帳面な報告のメールに小さく舌打ちした。
まったく、喧嘩させないのが、僕の役目だったのになんていう事だろう!!
悔やんでも悔やみきれない。
最優先事項の変更だ。
今の一番の優先事項は仲直りさせる事だ。
そうしたら神の子に謝っておかないと。
大丈夫だろうか?
彼は仲間どうしの諍いが嫌いだからね。

「なんで喧嘩なんかしたんだい?
 そんな事で彼らの苛つきが解消されたのかな?
 僕にはそう思えないけれど。
 余計に苛ついたんじゃないかな。
 彼らは皇帝に八つ当たりしていただけだろう。
 大人げないんじゃないかな。
 僕たちはまだ子供だけれどそれぐらいの理性が働くぐらいには大人なはずだと思うのだけれど。
 もっとも智に働けば角が立つとはいうけれどそれは彼らには関係ない話だね。
 それはもっと……」
「俺に当てはまる、とお前は言う。だが余計なお世話だ」

参謀は冷静な声でそう告げた。
彼は神の子のいらだちの被害に会わないように僕の所まで逃げて来たらしい。
さわらぬ神に、という奴かな。
喧嘩した彼らが皇帝に鉄拳制裁された頬を冷やす為にそろいも揃って保健室にやって来た時お話を少しはした。
無論、先生は居ないので僕がそれは僕が用意してあげたんだけれど。
その時の彼らの主張は

『仲間がいじめられてそれで黙っていられる方が可笑しいじゃないスか!』

である。

「それは確かに美しい行為ではあるけれどさ。
 でも正しくはないんだよね。だって考えてもみなよ。
 なんで椎名さんが久遠さんにいじめられてるからって久遠さんをいじめるんだい?
 浅さかすぎる考えだと僕は思うよ。
 守るならわかる。
 けれどその制裁はおかしいよね。
 あくまで二人の問題だ。
 彼らがなんで出しゃばってるんだい?
 皇帝の制裁はいつもきちんと理論が通ってたはずだよ。
 彼はそれを違わない人間だ。
 そんな彼の側にいてなんで彼らはそれが理解できないのかな。
 それに彼らが皇帝に八つ当たりしてそれで事態は進むどころか、悪化しているんだよね。
 もっとも僕が丸め込んで謝る事にはさせたけれど。
 でもこままだとまた同じ事が可笑しくない。
 同じ事を繰り返すような愚かなマネはしたくないんだ。
 対策を立てなきゃ行けないよね。
 お互いの為にもさ。
 その為にぜひ参謀の意見を聞かせてくれない?」
「……言葉で言っても聞かないだろうな。
 まっすぐすぎて一度信じた事を疑おうとしない」
「羨ましい限りだねぇ、それは!
 そーいうのはただの馬鹿な気がするのだけれど参謀はどう思うかい?
 彼らは智が働けば、より情に棹させば流される、だろうね。
 個人的な見解。
 皇帝は意地、のほうだろうね。
 まぁ、確かにいくら僕の言葉があるとは言え全ての行動に関与する事は不可能だ。
 マインドコントロールなんて僕にはできない。
 それは超能力者をつれて来いって感じだ。
 君は超能力、信じるかい?ん、だよね。
 君はそう言う人間だ。
 僕もそっち側の人間かな。どちらかと言えば」

だいたいペテンな事が多いからね、あの世界。


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