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派手やかなパーティーは引きこもりをしていた僕にはいささか煌びやかすぎて目がちかちかして落ち着かない。
紫のちょっと露出があるものの上品なドレスを身にまとい、挨拶回りをさせられていた僕は人知れずため息をついた。
神の子がまだ来てないというだけでこうも憂鬱になってしまうとは。
「キング……いや、けいご君」
「気持ちはわかるがもうちょっと我慢しろラン。
祭と一緒に来るんだ、そんなに遅れてくるわけがないだろ」
「わかってるけどさぁ」
「ふっ、喋れないと途端に元気が無くなるな」
「他人事みたいに言わないで欲しいな」
僕の立場上、誰が聞いているかわからないこの場ではいつもみたいに話せない。
その事実が僕には辛い。
虐待、違った、拷問を受けている気分だ。
「…お、来たようだな」
キングの声に伏せていた顔を上げて神の子を探す。
正装している神の子はいつもより大人びていて一瞬言葉を失った。
……神の子はいったいどこまで僕を魅了させられれば気が済むのだろう。
祭は祭で可愛いし!
なんかカップルみたいで気に食わないけど。
走って飛びつきたい衝動を押さえながら二人に近づいて優雅に会釈して笑みを作る。
「……本日はご来席ありがとうございます。
幸村様も、祭も楽しんで行って下さいね」
「お呼び下さってありがとう、霞ヶ丘さん」
僕の婚約者はあくまで今の所はキングなのでよそよそしい会話ななってしまっているが我慢だ我慢。我慢だ、僕!
少し世間話をした後にキングの気遣いでバルコニーに神の子と二人きりにしてくれた。
キングはキングで祭と話したいのだろう。
「ふふふ!ようやくまともに話せるよ!
いやはや、もう辛い事辛い事。
僕に黙れなんて死ねと同意語だよね!
しかし神の子のタキシード姿と言うのも新鮮だね。
よく似合ってる。
髪もちょっと結んでみるとまた違うと思うんだけど、どうかな?
詐欺師と被るから嫌だ?
君と詐欺師はどうやったって被らないと思うが。
性格的にね。
相性は悪くなさそうだけど」
「斎もよくドレス似合ってるよ。
馬子にも衣装って奴」
「馬子にも衣装?
酷いじゃないか。
しかし僕の寛大な心で許してあげるよ。
神の子のそんな所行には慣れっこさ。
いじめっ子だからね。
ところでこの後の手筈は覚えているよね。
パーティーを終えたら中島を見つけて案内してもらって僕の控え室に集合。
そしたらうちの両親が来るから頑張って説得をしようね。
父さんは大財閥のトップだから変に小細工するより
愚直に行くほうが幾らか効果的なんだ。
もっともキングの方の両親も僕らから話しをしなければいけないけれどこれはそこまで難易度は高くないと思う。
僕の家のほうが格式も財力も高いからね。それに祭の事もあるし。
心配しなくていい。きっと上手くいくさ。
父さんは基本的に親バカだから、ね」
片目をつぶってみせる。
父さんはうざいぐらい娘馬鹿だからさ。
「当たり前だろ。成功させる。
ややこしいのは面倒だからごめんだよ」
「そうだね。ねぇ、精市君」
「なんだい、シン」
「キスしよ」
「……そういうスキンシップはあんまりしないって言ってたくせに」
「いいじゃないか。そういう気分なんだよ、僕は。
だいいち、ちゃんとした恋人じゃないから義理だてしてあまり恋人らしい事はできないでいたからさ。
たまには積極的にはなる。
神の子が悪いんだよ。
会場にいる女の視線がうざったい。
どれもこれも神の子が魅力的なのがいけないんだ」
「嫉妬?」
「そう、嫉妬。
曖昧だから、時々不安になる。ね、精市。
だから、さ」
「ハイハイ。我が侭だね斎は」
神の子の首の腕を回して誘うように僅かに唇を突き出して目をつぶる。
神の子も僕の腰に手をまわして熱の籠ったキスをしてくれる。
うん、こうしてると愛されてるなーなんて思う。
バルコニーから一緒に出たらまずいから神の子が先に出ようとしたら、いきなり耳に顔を近づけて
「馬子にも衣装なんて嘘。よく似合ってる」
なんて言うものだから耳を押さえてその場にうずくまる。
「精市君のキザ野郎」
絶対今、神の子はいい笑顔をしてる。
負けた、悔しいな。
絶対にしかえしてやる!!
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