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戦慄した、んだよね。
僕は。
だってそうだろう?
世界中の何処の誰が自分の双子の妹がイジメにあう想像なんてするわけないんだから。
想像してなかった光景がかなりひどい状況で行われていた。
本来守るべき大人も欲の為にしかるべき処置をしていない。
おぞましかったね、それに気持ち悪かった。

『なんで私に言わなかったの祭!!』
『だって、お母さんがイジメは僕に原因があるから僕がどうにかしろって』

この言葉にさらに絶望したね。
僕の両親は政略結婚であったとはいえ良い夫婦関係を築いていたからね。
親がそんな事を言えるなんてこれも想像していなかった。
祭の両親は本家の血をもつけれど。
持つが故に使用価値のない子供を強制的に引き取らなくてはならなかったから愛情なんてこれっぽちも与えていなかったのさ。
大人のその態度に絶望を覚えざるを得なかったが更には僕は気づけなかった自分に一番絶望した。
この痛みは、祭のSOSだったのに直ぐに気づかなかった事に。
ましては文句を言いにいこうとした事に。
そしてそれがあるまで一生気づかなかっただろうと言う事にね。
世界が一気に色が変わってしまったように思えたよ。
それで僕は、私は他人をましては自分自身を信じられなくなったのさ。
それからまったく信じられない世界に身を置いていて夜、安らかに眠る事はできなくなった。
僕は要するに不眠症に陥ってしまったのさ。

「それは霞ヶ丘さんの責任ではないと思いますが」
「客観的に見ればの話さ」

僕は勿論直ぐさま祭を助けるべく、動いた。
僕は愚かではあるけれど馬鹿ではない。
一人でなんとかならないなんて事はわかっていたので親に報告した。
事態を無理矢理に治め、僕はそのアフターケアにつとめたけれどしかしだからと言って僕は自分自身を許せなかった。
だってその時に祭は心を失いかけていたからね。人形みたいだった。
それは僕に影響した。それはもうダイレクトに。
いつの間にか立場が逆転した。
僕が祭で祭が僕になったみたいな状況になった。
滑稽だろう?僕は哀れにも祭の代わりに心を失いかけた。
祭の心を取り戻す為に、だ。
そんな時、僕は彼に出会った。
当時ただの少年であった、なんの肩書きも持たない、幸村精市と言う少年にね。

「その時の霞ヶ丘はとても虚ろな瞳で死人みたいだったんだよ。
 俺は俺のエゴから斎を助けようとしたんだ」
「方法は割愛させてもらおう。
 すごい荒治療だったから僕としても話したくない」
「そうそう。
 あれは我ながら惨かった。今の俺はできないよ。
 子供だからできた技と言うか、うん」
「今の幸村ですら出来ない事って思うとおぞましいぜよ」
「どういう意味だい?」
「プリ」

あははは。
そんな感じで僕は僕をどうにか取り戻したものの不眠症は治らなくてね。
神の子が側にいれば話は別だけれど。
寝ると言う行為はとてもとても大切な事なんだ。
普段何気なく行っているからあまり感じないことだけれども。
そして体力が自分で回復できない以上集団の中に居る事はできない。
いつ体が限界が来てぶっ倒れるかわからないからね。
睡眠薬もかなり強力なのじゃないと効かないからあまり使えないし。

「そんな感じでそんな風に僕は引きこもりになったのさ」
「一人称が変わった理由は話してない」
「ん?ああ、それはケジメと言うかそんな感じだよ、参謀。
 祭の存在を忘れないようにね。
 ちなみに言うとから先に言っていおくけれど今、祭は氷帝で面白楽しく学生生活をエンジョイしているよ」
「では、幸村君と両思いなのに恋人ではないと言う理由はどうなんですか?」
「ああ、それは簡単な話さ。
 良い所の家にはよくある話で僕が跡部景吾……キングと婚約していてね。
 それで恋仲にはなれないって話。
 キングとは友情としていい仲は築いているがあくまで友情さ。
 キングはキングで実は祭と僕たちと同じ現状になっている。
 だから今どうやって婚約破棄をしようか考えているんだ。
 因みにこの事件に乗り出した。
 というか神の子が僕に相談したのもその一貫で僕は神の子の命令ならなんでも聞く、と思わせる事を分家達に思い知らせるのが目的。
 そんな子を放置するわけないだろう、分家の連中がね。
 それにいじめと言う事に個人的に思わない所が無いわけでもないしね」

以上、これが霞ヶ丘 斎が不登校の理由だよ!
と明るく締めくくった。


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