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「あはははは!何これ!!
 他力本願なのか自力本願なのか全く解らないし!
 というか、何あの夢見がちな想像!
 それに救世主が僕だと思われているのにも笑えてくるよ!
 久遠さんがあんな事を考える性格なのにもびっくりだよ!
 あっははははは!
 まったく、僕を笑い殺す気かい!?
 それになんで詐欺師君最後にあんな事言ったの!?
 しょうもない存在感過ぎてかえって笑えてくるよ!」

ひーひー言いながら笑う僕。
呼吸が辛い。
本当に笑い死にそうだ。

「……思わず言ってしまっただけぜよ」
「ま、たしかに斎は救世主って柄じゃないよね」
「笑い過ぎですよ、霞ヶ丘さん。
 いくらなんでもそこまで笑うのは」
「それに保健室から爆笑が聞こえて来て怪しまれるのも困る」

参謀はクールだなぁ!
でもそのとうりだな。
頑張ってかみ殺す。

「これはなかなか良いじょうほ、ふふふふ、失礼。
 なかなか良い情報だったね。
 久遠さんがいじめていたと言う可能性は無くなったわけだ。
 わざと聞かれている事を計算してというわけでもなかろう。
 て言う事は問題は椎名さんか。
 僕も会った事はあるけれど裏表がありそうにないんだけれどな。
 みんなは彼女の悪い噂でも聞いた事は?ないか。
 何かあったらまず君達には聞かれたくないだろうからしかたないと言えば仕方無い。
 そこあたりはファンクラブに当たった方が早いかもね。
 会長は何処のどなはだい?」
「三年C組の近藤だ」
「ありがとう、参謀。
 きちんとそこあたりのデータは押さえているみたいだね。
 では今度、彼女に聞いてみよう。
 椎名さんの事は彼女は嫌っているのかな?
 椎名さんよりの中立か。
 妥当な判断だろうね。
 守られているとは言え、それでもいじめで散々な目にあっているからこれで便乗するよりテニス部に恩を売っておこうという算段だね。
 まったくけなげなものだ。
 同じ女子の僕からして凄いと言わざるを得ない。
 おもわず惚れてしまいそうだよ」
「斎」
「その子が男だったらね。
 僕には百合の気はない。
 それにやられている方の身になれとでも思っているのだろう?
 だから君達はっと。
 これはこれは椎名さん!」

扉を開けた椎名さんに挨拶する。
彼女は神の子達を見て驚いているみたいだ。

「また怪我かい?どこで?」
「えっと、階段で。
 私、おっちょこちょいで何も無い所ですぐ転んじゃうの」

何もない、誰も居ない所でって事かな。
それを漂わせるような物言いをわざとやっているのならばとんだ策士だよ、椎名さんは。

「それでえっと霞ヶ丘さんは幸村君達と何をしてたの?
 というかそもそも知り合いだったんだ」
「まぁの。所で椎名さんこそ霞ヶ丘と知り合いだったんじゃな」
「友達だよね!ふふふ、忘れないよ。
 始めてあった時の告白を!」
「え、告白とかなんだか危ない言い方しないでよ」
「そいつは失礼」

ふふふふ、と笑ってみせると気が抜けた表情をする椎名さん。
どうにか誤摩化せたね。

「怪我の治療してあげようか?」
「大丈夫。なれてるかから」
「そうかい。
 しかし椎名さんは本当にしょっちゅう怪我をしているね。
 怪我をする神様に愛されているかのような感じだよ!
 もっともそんな神様がいてたまるかって意見の方が強いのだけれども。
 僕も嫌だな。
 なるべくそんな神様とはおかかわり合いになりたくない。
 久遠さんは関係ないのだろう?
 椎名さんはいつもそう主張しているものね。
 知っているよ。
 でもそんなに怪我をすると疑ってしまいたくなるのが人情ってものだ。
 僕はいつでも真実の味方なのさ。
 君の言っている事が正しいならば僕はいつだって君の味方になる。
 ああ、それとスー君にも言っておいてくれ。
 少しずつだけれども真実に迫っているから安心してくれ、と。
 椎名さんがいつも主張していても久遠さんがいつも犯人だと思っているみんなだ。
 君がいくら言っても聞かないだろうからさ。
 僕としても椎名さんが言っているからという理由でみんなを納得させられないのが考えものだよね。
 みんなは君の為にやっているのにみんな君の言葉を信じない。
 皮肉な話だよね、まったく。
 だからそういう訳で椎名さんもあまり派手な行動をしないで欲しい。
 君が動けば動く程に久遠さんの怪我に直結するからね」
「うん。わかった。ありがとう」

テキパキと怪我の治療をして保険室に出て行く椎名さんを確認してから話題を戻す。

「まぁ、彼女が来たのには驚きだけれども丁度、餌を与えられるから丁度良かった」
「椎名が久遠をはめる意志があったら斎の言う事とは反対に派手に動き回る。
 そうしたら椎名は黒だな」
「さすが参謀!
 よく判ったね。
 冷静な判断恐れ入るよ。
 さて、そろそろ午後の授業も始まる。
 教室に帰りたまえ。
 詐欺師君、お手柄だったね。ありがとう。またいい情報を期待しているよ。
 僕はこれから策を練る事にするさ」
「じゃあね斎。今日も待っててね」
「了解!」
「ふふ、俺も楽しみにしてるよ。
 こんな事ができるなんて思ってなかったからね。さ、みんな帰るよ」

久遠さんは白。
では椎名さんは黒?
僕の見立てでは……。
ふふふふ!楽しい事なりそうだ!!



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