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エース君がさっていった後。
ひょこりと顔を出した詐欺師君に笑いかける。

「お見事な手腕じゃのう」
「そう言ってくれて嬉しいよ、詐欺師君。
 ふふふ、君がエース君をからかってしまう気持ちがなんんとなく解ってしまったよ。
 しかし盗む聞きは良くないよ。
 褒められない行為だ。
 エース君は気づかないかもしれないけれどところがどっこい僕はそうはいかない。
 騙すのは、詐欺師君だけの領域ではない。
 もっとも、僕と君では大分種類が違うのではあるのだが」

実際の所、と詐欺師君が言った。

「幸村が容赦がないぐらい、そして怪我なれしてる俺らが部室にある治療具では足りないぐらい怪我をしているなら。
 もしかして怪我した人が動けなくなっているとも考えられるなり。
 赤也はそれで保健室に道具なとりにきた、ともな。
 怪我をしたと思うのは場所的にもおかしくないんじゃけれど、だからと言って赤也が怪我をしたと言う理由にはならん。
 お前さんはもっともらしい事をいっとるけどな」
「素晴らしい考察だ。そのとうりだよ!
 本当はもう少しまともな根拠を作るが、相手が彼だからね。
 問題ないと判断した。
 それにあまり考える時間がなかったしあまりにも引き伸ばすのは悪かろう?
 素晴らしい推理にお礼に僕も一つ、君の考えるを当ててみせよう。
 僕の会話運びにも仕掛けがある、と君は言う。
 参謀風に言ってみたけど我ながら似てないね。
 言い慣れなの違いかな?
 貫禄の差かもしれないね。
 それはどっかに置いておくとして僕が治療を申し出たらエース君の性格上断る。
 理由はミーハーだから。
 僕が彼の性格を知っているのは神の子からであろう。
 そして僕はミーハーについて話しミーハーではない人、つまり椎名さんを一回思い浮かばせておく。
 そのまま例を取り出したから今のイジメの件と重ねてしまう。
 僕はミーハーである事が即ち馬鹿でうざい奴じゃないと説明しておきながらエース君に今回のイジメへの疑問を抱かせる事に成功した。
 自分は久遠さんが椎名さんを実際に見た事がなく周りがそう言ったから信じた。
 でもそれは本当に正しいのだろうか、とね。
 エクセレント!!詐欺師君のその考えは見事に正解だ」
「俺も騙されそうだったぜよ。
 詐欺師の俺が騙されかかるってお前、なかなかいかれとるな。
 おしゃべりが長いのもそれを気づかせにくくするため、だろう?
 活字で見てるのとは違う。
 読み返すのはできんからのぉ」
「属性が似てるせいで考えがばれやすいな、どうも。
 初期段階で仲間だったのは幸いだよ。
 それに君とは仲良くできそうだ。
 ごめんだとか言わないでくれよ。
 詐欺師君だってそう思っているだろう?
 おまけに解るからこそ仲間にするべきか敵にするべきか解ってしまう。
 ふふふふ、テニス部の連中とはなかなかいいおつきあいができそうだ。
 それで詐欺師君は僕にようがあったんだろう?
 僕の調査の為だけに部活は抜けて来られまい」

筒抜けなのは僕の考えだけではなく君の考えもそうなんだよ、詐欺師君。

「幸村が今日は部活が終わるまで待ってろと言っとたよ」
「極めて了解。待っていようと伝えてくれ。
 お弁当の次は一緒に下校か!
 なんて学生らしいのだろう。
 それだけでも立海に来たかいがあるというものだ。
 さて、伝達が終わったら帰ってくれないか?」
「なんじゃ。冷たいの」
「報告が終わっていつまでもここにいられたら咎められるのは僕なんだよ?
 詐欺師君だって後で罰則があるかもしれない。
 皇帝や参謀なら上手くやり過ごすだろうが神の子にその手はなかなか通じないだろ?
 僕もそうだからね。
 だから彼は興味深い。
 僕はとても好奇心旺盛なんだ。
 だから僕は彼の側にいる」
「……、まぁの。それじゃあな」

薄く笑ってさっていく詐欺師君。
これまで詐欺師君とは窓をはさんで会話していたのだけれどでもあれだよね。
どこで聞いていたんだろう。
保健室は一階で校庭側に窓がある。
そこに身を隠していたのだろうけれど端から見ればどうだろう、けっこう間抜けな形だと僕は思う。
もっとも、詐欺師君の事だ。
周りの人に見られるなんてヘマはしないか。

しかし以外と展開が遅いな。
もっとちゃっちゃと事を済ませるつもりだったのだけれど長期戦になるかもしれないな。
それはそれで構わないけれど。
そうだな、その内にテニス部以外の人にも聞き込みをしてみるか。
もっと違う話を聞けるかもしれない。
立場によって見える物は変わってくる。
僕はそれを全部把握しないといけない。
神の子からの依頼なんだから完璧に処理したい。
真実がどうなのかわからいけれど慎重に事を進めている。
それに僕の勘なんだけれどこれはもっと裏があるようにも思えるしな。
だいたい僕が関わった事で普通な結果に終わる方が稀なんだから。

「待たせたね、斎」
「待つのにはなれているさ。さぁ、では帰ろうか」

神の子との下校はそれはもう楽しかったとだけ記しておこう。


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