12


僕は放課後はだいたい一時間ぐらいしたら帰ってしまう。
その一時間は彼女達が何かまたやらかした時に現場検証する為。
今日は神の子の仰せで保健室に何時までもくすぶっていた。
くすぶるってくすぐるに似てるよね。

「あー、幸村部長、容赦なさすぎだろ……」

来た!!
ついにエース君のご登場だね。
予定どうりにエース君を保健室送りにしてくれたというわけだ。
さすが神の子だ。
なんなくやってのけてくれた。
だから君は最高なんだ!
能力ありし者は打たれるとはいうが本来は歓迎すべき事なんだ。
なんで嫌うか僕にはまったく理解できない。
能力、才能ほど素晴らしい財産は存在しないと言うのに!!
まぁ、しかし人が愚かなのはいつの時代であろうと変わらない事であるし
しかたないと言うしかないのだろう。

「これはこれは、王者立海、二年生エースにして次期部長候補者である切原赤也君ではないか。
 初めまして。
 ところで君は現在部長である神の子の手によって怪我をしたみたいだね。
 何故わかるって?
 独り言はたしかに聞く相手がいないのに一人でものを言うことではあるのだけれども他人の目、いや耳か。
 耳がある可能性がないとは言えないだろう?
 僕はエース君がこの部屋の前で漏らした言葉を聞いただけさ」
「でも、俺が怪我をしたとは限らないだろ」
「おいおいおい!
 その頭は飾りなのかい?少しばかり考えればすぐにわかる事だ。
 まずここは保健室。
 それに君はスポーツマンだ。
 多少の怪我なれはしているだろうし、部室にも簡単な救護セットはあるはずだ。
 なのにここに来る。
 また神の子が容赦ないと言う言葉は君の感想。
 君がやられ、部室にある物ぐらいは足りないぐらいの怪我をしているからと言うことだ。
 何故そのような怪我をしたというのは聞かないが僕が治療してあげようか?
 足とはいえ自分の体を治療するのは大変だろう」
「いらねぇよ」
「うん?何故だい?」
「そんな事を言い出すなんてどうせミーハーだろ。それにお前うざい」

そう言って自らの手で怪我を治療し始める。
意外とテキパキとしているから僕の申し出は本当に要らなかったようだね。

「見解の違いだね。
 僕の事をさして面白い、賑やかと評する者もいるが、しゃべりすぎてうざったいと思う、そんな人もいると言う事だ。
 だが申し訳ないが僕はこのおしゃべりは今更治らないから我慢してくれ、としか言いようが無い。
 大丈夫、その内なれるよ。
 それに僕がミーハーではないと訂正したいがこれも君がそう思う限り訂正した所で意味を持たないだろう。
 しかし、誰でも彼でも近づく女がミーハーだと思うのはやめた方が良いよ。
 老婆心ながら、注意しておくとね。
 エース君だって身近にそんな人を一人は知っているだろう。
 それにミーハーである事がすなわち悪い、性格が悪いとは言えないよ。
 人間は第一印象で人の人格を決めてしまう所がある。
 例えば、厚い眼鏡をかけて前髪が長くて長い髪を三つ編みにしてある子を見たとしよう。
 それで地味だ、暗いだと思ってしまう。
 話した事もないのに。
 本当はその子が楽しめる会話をしてくれる子かもしれないんだよ?
 だから事実を見ないで物事を決めてしまったらいけないよ。
 他人が例えある事をそうだ、と行った所で本当にそうだと限らない。
 それこそさっき話した見解の違いもあるしその人が話していた事が本当だとエース君はいえる?
 たとえその人がいかに尊敬する、頭のいい人でも人は間違えない事はないんだからね。
 だから先入観を持ってはいけない。
 ある出来事に対して、エース君は本当にその事が起きたと言えるのかい?
 実際に見ない限りもしかしたら違うかもしれないという考えを頭の片隅に入れておける人はたいてい頭のいい人が多いよ。
 成績のいいとは別の良さだけれど。
 ん?どうしたんだい?何か顔色が悪いけれど」
「なんでもねぇよ」
「そうかい。ならいいんだけれどね。本当に悪くなる前に休憩はとっときなよ」
「……お前、名前は?」
「斎だよ」
「……そうか」

入る時とは反対に静かに部屋から出て行くエース君。
うん、彼は単純で騙しやすいなぁ!!
思わずクセになってしまいそうだ。



戻る
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -