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そんなこんなしている内に昼休みになって神の子が保健室にやって来た。
思わず感激で教科書、数学の教科書を床にほおって神の子に抱きつく。
けっこうな勢いで抱きついたけれど流石、神の子。
まったく動じなかったよ。

「来た瞬間からそれか。
 そんなに暇だったかい?」
「ああ、とってもね!
 それに普段はあまり会えないから今こうして会える機会が増えて僕は大変幸せな気持ちなんだ!
 いちゃいちゃできる時間が増えるからね。
 いちゃいちゃが死語だとか言っちゃいけないよ!
 それで神の子は何をしに来たのかな?
 お昼はテニス部員のみんなとお昼をとっているのではなかったのかい?
 それとも僕の記憶違いかな」
「今日は斎と食事をしたくてね。
 お弁当も持って来たんだ。
 テニス部の連中は椎名さんが最近お昼に参加してきたせいでばらばらにとってるんだ」
「なるほど。
 イジメの為に一人でとらせるわけにはいかないという騎士精神だね。
 カッコいいじゃないか!
 ふふふ、僕もそんなふうに愛されたいねぇ。
 いや、もちろん神の子からの愛情を感じていないというわけではないよ。
 勘違いしないでくれ。
 だからその怖い笑みをしまってくれ。……ありがとう。
 それに僕は神の子だったら選択の余地もなく大歓迎だよ!
 一緒にお弁当を食べるなんてなんて学生らしいイベントだ!
 僕は引きこもりだからなかなかそういう機会に恵まれていないからね。
 でも、神の子よ。
 それで君はいいのかい?いや、違う。
 精市君。
 君は大丈夫かい?」
「ああ、大丈夫だよ、シン。
 まったく君はなんでもお見通しだな」
「君の恋人だからね!」

解って当然じゃないか!
シン、は僕の「ナッシングオール」からとったあだ名だ。
この名前を付けた愛すべき友人は神の子だからね。
彼が僕をシンと呼ぶなら僕は精市君と言うし、逆もまたしかり。
そしてたいてい真剣な話をする時に使う。
神の子はとっても友情に厚いからね。
こうやって一緒にお昼をとらなくなるなんて仲間が離れていくようで辛いに違いない。
だから僕の所にやってきた。
ならば僕は心の底から慰めてあげるだけだ。
神の子は言葉で甘えてはこれないからね。
これが精一杯の甘えなのさ。
基本的には僕が甘える側には違いないんだけれど。

お弁当を開けて適当な雑談、例えばゴリラとチンパーンジーの差についてだとか馬鹿とアホの差だとか。
そんなどうでもいい話題をしつつもお弁当をつつく。

「やっぱり一緒に食べる人がいると違うね」
「全くだ。特に斎は一人で二十人ぐらい話すからね。
 君一人いれば退屈しないよ」
「褒め言葉と受け取っておこうかな。
 僕はしゃべってないと落ち着かないのさ。
 それこそマグロみたいにね。
 では、おしゃべりついでに報告をしておこうかな。
 今日は久遠さんとお知り合いになったよ。
 プライドが高そうな子だったがまぁ、コントロールは簡単だったよ。
 彼女は自分はイジメはしてないと主張している。
 椎名さんの事も前に話してたが彼女は本当に綺麗な物、者が大好きだね。
 僕も友達になってくれと言われてしまったが
 スルーさせてもらった。
 僕は友人は選ぶ方なんだ。
 神の子と同じようにね」
「斎は黙ってれば美人だからね。
 深窓の令嬢に見える。
 黙ってれば、ね」
「そう黙ってればと言わないでくれよ。
 それに黙ってなくても容姿は変わらないよ。
 閑話休題、椎名さんはイジメられてないと主張する。
 言葉の上では矛盾は存在していない。
 でも彼女は実際の所怪我をしている。
 どちらの言葉を信じるとしても久遠さんはじめてないだろう。
 だから謎なのは彼女の怪我の理由だな。
 彼女は久遠さんを陥れる可能性はあると思うかい?」
「わからないな」
「ほう?」

それはおもしろい意見だ。

「俺の知る椎名さんは間違いなくやらないだろう。
 それに、彼女は嘘が苦手だ。
 嘘をついたら直ぐに判る。
 でも人はどこで変異するかわからない。
 久遠さんを恨まない理由はないとは言いきれない」
「確かにね。そこは調べる必要があるね。
 適当に生徒達に聞いて回るか。
 カメラにはまだ面白い絵以上は映し出してくれていない。
 現実はそんなに上手くいかないな。
 今の所、一番最初に落とせるのは皇帝かな?
 やっかいではあるがこれは証拠が集まった時点で攻略したとみなしていいだろう。
 時間の問題だ。
 まだ接触してないにはエース君と黒豆……ディフェンダー君かな。
 聞く限りでは一人は単純、一人はお人好しだから適当に自分の考えに疑問を持つような考えを吹き込めばいい。
 どっちかを保健室おくりにしてよ。
 部活で打球のコントロールしてさ。
 君ならそのぐらいコントロールできるだろう?
 あまり気が進まないのはわかるが、じゃないと接点が全然ないんだ。
 エース君のほうか。
 神の子はエース君を可愛がってたからね。 
 僕もエース君を可愛がりたいものだ。
 ん?……あぁ、ふふ。
 大丈夫。
 浮気なんてしないよ」
「そんな事考えてない」
「そうかい?君の拗ねたような顔を見るのもいいが、確かに恋人の前で他の男の名前を連呼するもんじゃないな。
 ごめん、悪かったよ。
 これで許してくれないかい?」

神の子にキスをすると若干、機嫌も直してくれたようだ。

「心配だよ、斎。
 お前は学校にこうやって来るのはしんどいだろ?」
「心配はいらないよ。
 ふふ、まったく可愛い恋人だな。
 おっと、訂正。
 カッコいいだな。
 僕の恋人が君で嬉しいよ」

そっと包むように抱きしめながらくすくすと笑っていると不機嫌そうに頭にチョップをくらわせてきた。
まったく、痛いじゃないか。
こんな神の子、他の人は知らないだろうな。
恋人の特権てっやつだね!!

「好きだよ、斎」
「僕も好きだよ」

久々の二人だけの時間なんだ、存分に楽しもう。


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